「New Moon」
Mid Night ヨコハマ
Mid Night ヨコハマ ー午前0時 10
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次の日は、これまでとまったく変わりのない日になった。
放課後の校門の前で、ぎょっとするような金髪頭に出迎えられることもなく、一臣は塾に行った。
塾からの帰り、駅への道を歩きながら、一臣は裕貴と出会ったコンビニへと向かう分かれ道にちらりと目を向けた。
あのコンビニには近寄るな、と裕貴は言っていた。
一臣は、足を止めずに曲がり角を素通りすると、そのまま駅へと向かった。
横浜最大勢力グループだという横浜タイタンは、すでに裕貴の反逆を聞き及んでいるのだろうか。一臣が、家路に向かう、今この時も、タイタンは裕貴の行方を追っているのか。
裕貴は、今、どこで、なにをしているのだろう――
いくら相手が多勢とはいえ、ただ逃げ隠れしているわけにはいかない――逃げ隠れして、いつか、ほとぼりが冷めるものなのか分からないが、当の裕貴にそのつもりがないようだ。
裕貴は、タイタンの頭を狙う、と言っていた。
そうは言っても、相手は構成メンバー二百名という大組織だ。その大半は未成年の不良少年だろうが、その包囲網を突破して、裕貴はリーダーとやらに辿り着けるのだろうか。
たとえ、辿り着けたとしても、二百人もの少年たちを束ねるリーダー相手に、裕貴は勝ち目があるのか――
あいつには、なにか、策があるのだろうか――
考えれば考えるほど、裕貴の行動は無謀に思えてくる。
タイタンのような巨大組織では、所属したところで、所詮、下っ端の構成員で、それでは意味がない、という裕貴の理屈は分かる。二百人のメンバーの中で頭角を表し、上部組織である暴力団に顔を売る、というのはなかなか難しいだろう。しかし、その二百人を蹴散らして、リーダーを狙うという方法にも、現実味があるとはとても思えなかった。
しかし、同時に、裕貴ならば、なにか考えがあるのかもしれない、とも一臣は思っていた。
裕貴は、これまで、一臣が知っていたその誰とも違う種類の人間のように感じる。あんな金髪の不良少年だから、将来を約束された一臣の同級生たちと住む世界が違うという意味ではない。そうではなくて――…裕貴は、なんだか予測がつかない ――のだ。
自分とは、毎日の生活も、待ち受けている将来も違う不良少年というだけでは、そう感じたりはしない――彼らの行動も思考様式も、なんとなく予想がつく。多分、彼らの誰と話しても、一臣がそんなに驚かされることはないのではないだろうか。
しかし、裕貴の行動と思考は、一臣の予想とはまるで違うものだった。
たったひとりで、怖いもの知らずにも大組織に立ち向かおうとしている、ただの無鉄砲な少年なのかと思えば、一臣の行動を見越して、事前に、夜歩きをするな、と忠告してくる用心深さだ。
あの少年――裕貴の予測のつかない行動、思考に、一臣が興味を惹かれていることは間違いなかった。
裕貴という少年は、これまで予想どおり、予定どおりでしかなかった一臣の生活に飛び込んできた、不思議な異物だった。
次の日は、これまでとまったく変わりのない日になった。
放課後の校門の前で、ぎょっとするような金髪頭に出迎えられることもなく、一臣は塾に行った。
塾からの帰り、駅への道を歩きながら、一臣は裕貴と出会ったコンビニへと向かう分かれ道にちらりと目を向けた。
あのコンビニには近寄るな、と裕貴は言っていた。
一臣は、足を止めずに曲がり角を素通りすると、そのまま駅へと向かった。
横浜最大勢力グループだという横浜タイタンは、すでに裕貴の反逆を聞き及んでいるのだろうか。一臣が、家路に向かう、今この時も、タイタンは裕貴の行方を追っているのか。
裕貴は、今、どこで、なにをしているのだろう――
いくら相手が多勢とはいえ、ただ逃げ隠れしているわけにはいかない――逃げ隠れして、いつか、ほとぼりが冷めるものなのか分からないが、当の裕貴にそのつもりがないようだ。
裕貴は、タイタンの頭を狙う、と言っていた。
そうは言っても、相手は構成メンバー二百名という大組織だ。その大半は未成年の不良少年だろうが、その包囲網を突破して、裕貴はリーダーとやらに辿り着けるのだろうか。
たとえ、辿り着けたとしても、二百人もの少年たちを束ねるリーダー相手に、裕貴は勝ち目があるのか――
あいつには、なにか、策があるのだろうか――
考えれば考えるほど、裕貴の行動は無謀に思えてくる。
タイタンのような巨大組織では、所属したところで、所詮、下っ端の構成員で、それでは意味がない、という裕貴の理屈は分かる。二百人のメンバーの中で頭角を表し、上部組織である暴力団に顔を売る、というのはなかなか難しいだろう。しかし、その二百人を蹴散らして、リーダーを狙うという方法にも、現実味があるとはとても思えなかった。
しかし、同時に、裕貴ならば、なにか考えがあるのかもしれない、とも一臣は思っていた。
裕貴は、これまで、一臣が知っていたその誰とも違う種類の人間のように感じる。あんな金髪の不良少年だから、将来を約束された一臣の同級生たちと住む世界が違うという意味ではない。そうではなくて――…裕貴は、なんだか
自分とは、毎日の生活も、待ち受けている将来も違う不良少年というだけでは、そう感じたりはしない――彼らの行動も思考様式も、なんとなく予想がつく。多分、彼らの誰と話しても、一臣がそんなに驚かされることはないのではないだろうか。
しかし、裕貴の行動と思考は、一臣の予想とはまるで違うものだった。
たったひとりで、怖いもの知らずにも大組織に立ち向かおうとしている、ただの無鉄砲な少年なのかと思えば、一臣の行動を見越して、事前に、夜歩きをするな、と忠告してくる用心深さだ。
あの少年――裕貴の予測のつかない行動、思考に、一臣が興味を惹かれていることは間違いなかった。
裕貴という少年は、これまで予想どおり、予定どおりでしかなかった一臣の生活に飛び込んできた、不思議な異物だった。
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