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Killer Street

第三章『殺人衝動』2

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「…依頼主は…――おまえかよ?」

獲物は自分の命だというのに、橘がにやにやしながらそう尋ねると、笈川は呆れた調子で、バカ、と一言、言った。

笈川が依頼主では説得力に欠けるだろう、と慧は思った。

笈川は橘組の若頭であり、橘の片腕だ。それだけではなく、笈川が橘の愛人のひとりであることは公けになっているらしい。

そんな笈川が殺し屋を雇って、愛人でもあり、自身の親でもある橘 裕貴を亡きものにしようとしている――ではさすがに信用されないではないか。

だから、慧も頷いた。

「一臣さんがおまえを殺そうとするなんて、誰も信用せぇへんやろ」

しかし、それを聞いた橘は、にやりと邪悪な笑みを浮かべた。

「そうでもないぜ。親子盃の力なんて、今時たいしたことねぇ」

「え…、でも…」

驚いて笈川を見ると、当の笈川もそれを否定しようとはしなかった。

「何年か前、愛媛の親分がタマ取られたときも、殺しロクったのは、そこの若頭だったな――しかも手引きは親分の女房バシタだ」

橘は頬杖をついてにやにやと笑った。

「まったく油断がならねぇ世界だよな、一臣?」

「そう思うなら、おまえも情人イロに寝首を掻かれないように、せいぜい気をつけることだな」

笈川はふんと鼻先で笑った。

「やぶへびかよ」

橘は笑いながら煙草に火を点けた。

「舎弟が親爺を殺すロクっちまうなんて珍しくもない話だが、それこそ組織内ウチワの揉め事なら自分でやるのがヤクザだ。俺が依頼主じゃ、そこに説得力がまるでない」

笈川は、慧の疑問に答えるように言った。

「ったく、俺も気が抜けねぇな」

橘が本気とも冗談ともつかないボヤキを漏らすと、笈川がふんと鼻を鳴らした。

「殺し屋に命を狙われているおまえが気を抜いてどうする。俺じゃなくても、おまえを死体オロクにしたいってヤツはごまんといるんだ」

橘は、分かった、分かったと面倒そうに言ってから、ソファテーブルの上に置かれたクリスタル製の灰皿に煙草を押し付けた。

「…で? 依頼人は誰にしたんだよ?」

つかさに頼んだ」

「司?」

「司って、あの司くん?」

慧の問いかけに笈川が頷いた。

司は、都内で、ウリセンと呼ばれる同性相手の売春業に従事していた少年だった。

つい先日、橘の愛人のひとりと共謀して、慧と橘に仇をなそうとした少年ではあったが、親の借金のカタに、長い間、売春行為を強要された、人生に恵まれない少年だった。

慧を拉致して害をなそうとしたことは事実だが、司は、結局、最後まで慧を傷つけることはしなかった。

この商売から足を洗いたいと願っていた筈だが、彼は今頃、どうしているのだろう。

ほんの一時ではあるが、橘組でともに時間の多くを共有していた慧にとっては、他人とは思えない弟のような存在だった。

「司なら、おまえを殺っちまいたいと思ってても説得力あるだろ?」

笈川がからかうように言うと、橘はあからさまに嫌な顔をしてみせた。

「冗談じゃねぇよ。慧を拉致ったことだってチャラにしてやったんだぜ? 感謝して欲しいくらいだぜ」

「外の連中はそれを知らないからな。外のヤツらはこの間の件も、橘組ウチあかり、 、 、へのリンチを司が逆恨みして事件を起こしたと思ってる」

あかりは、橘組が抱えている風俗嬢のひとりだった。事件の経過で明らかになったが、あかりは司の実の姉だった。

弟の司とともに、親の借金のカタに売り飛ばされた女だったが、都内のウリセン、ナンバー1にのし上がり、順調に借金を返済していった弟とはうらはらに、薬物に溺れ、男を騙しては逃げ出すことを繰り返し、横浜中の風俗店をたらい回しにされた挙句、橘組が身柄を引き受けたという経緯があった。

実際は、司が橘組に潜り込んで慧を拉致した事件の主犯は、橘の愛人のひとりであるバーテンダーの拓巳たくみであったが、拓巳の本職は竿師*10と言っても過言ではない。そのシノギゆえ、拓巳がヤクザの組長で、その上、男である橘 裕貴の愛人であることは非公開情報だ。だから、前回の事件のときも、拓巳の存在は表立ってはなかったものになっている。*11

「…なるほどな。司はまだ俺にとっては説得力のあるヤクネタ*12ってわけか」

「おまけに都内ナンバー1のヤツには金もある。殺し屋くらい雇えるだろう」

笈川は顔色も変えずにそう言うと、ちらりと橘の顔を見た。

「心配しなくても司にはこっちから見張りをつけてある。あいつはバカじゃない、そうそう殺し屋に始末されることもないだろう」

それを聞いた橘は、ふんと鼻で笑った。

「けっ。心配なんかするかよ。殺し屋にしたところで、がひとつで金の出処がふたつなら儲けリツは倍だ。司を殺るより、てめぇの客にしちまった方が得に決まってら」

「リツが倍か。殺し屋もやる気が出そうだな」

笈川が涼しい顔でコーヒーを啜ると、橘は舌を出して、鼻に皺を寄せた。





*10… 女性を性行為で虜にし、金銭を貢がせることを職業としている者。
*11… 同ブログ『Dirty Situation』参照
*12… 障害物。
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