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New Moon

Mid Night ヨコハマー夜明 3

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「いや、思ってない」

「じゃあ、なんだよ。俺のしたことにモンクでもあんのかよ?」

その問いにも一臣は首を振った。

本当に、裕貴の行動を、莫迦げているとも思っていなかったし、文句もなかった。

ただ、自分とはあまりにも違う価値観に驚きを覚えただけだ。

そういう考え方をしているのか――と、新鮮に感じただけだ。

「なに? おまえもヤキ入れてみたかったとか?」

裕貴が、莫迦にしたように笑った。

「そうだな…」

一臣が、そう言うと、今度は裕貴がぎょっとした表情を浮かべた。

「は? おまえ、大丈夫か?」

「ヘン…かな?」

一臣の問いかけに、裕貴が溜息を吐いた。

「おまえみたいなイイコちゃんに、ヤキ入れなんてできるわけねぇだろ」

「…やり方とかってないのかな?」

一臣の素朴な疑問に、裕貴は片目を眇めて顔を歪めた。

「ふざけんな、マジで」

「ふざけてないけど」

突然、裕貴が立ち止まった。

「…おまえ、殴られるってどんなことか分かってんのかよ?」

数歩後ろで立ち止まった裕貴に振り返ると、裕貴は暗い路上よりももっと冥い瞳で一臣を見つめていた。

「骨が折れるほど、ぶん殴られたことがあんのか? やめてくれ、助けてくれって泣いたことあんのかよ?」

裕貴の口元が歪んだ――皮肉な笑みが口の端に浮かんでいる。

「殺されちまうかもしれないって、ビビったことあんのかよ」

口元には笑みが浮かんでいるのに、裕貴の瞳は今にも泣き出しそうに見えた。

「裕貴…」

「人を殴るってのは、殴られた痛みが分かってなきゃ、できねぇんだ。そういう奴らはやめどき、 、 、 、ってのが分かんねぇ。どれだけ殴ったら人が死ぬか――痛い目みたことねぇヤツは…分かんねぇんだよ」

裕貴は、ふっと鼻先で笑った。

「――おまえ、親にも殴られたことねぇってツラしてるぜ?」

裕貴はそう言うと、一臣から視線を逸らして、暗い夜道を歩き出した。

その後ろ姿をしばらく見つめてから、一臣は無言のまま裕貴の後ろを追った。

やめどき、 、 、 、――の話をこの少年がするとは思わなかった。

裕貴の行動は、それを知っているようには、とても見えない。

しかし、一臣はそうとは言えなかった。

多分、この少年の言うことは本当だ、と思った。

殴られたことのない人間に、殴られる痛みは分からない。どれだけの力が、人の体にどれだけの脅威になるのかが分からない。

この金色の髪の少年は、きっとそれを知っているのだろう。

殴られる痛み、痛めつけられる惨めさ――

――助けてくれって泣いたこと、あんのかよ?

一臣の脳裏に、見たことのない筈の、今よりもっと小さく、身を守る術も知らなかった幼い裕貴が、見も知らぬ男に殴られている姿が浮かんだ。

やめて――

助けて――

泣いても叫んでも、誰も助けてはくれなかった、幼い子ども――

真実、そんな目に逢っていたと、裕貴が口にしたことはない。

それでも、そんなことがある筈がない、と考えるほど、一臣は莫迦でも世間知らずでもなかった。

自分の産んだ子どもに興味が持てず、その時々の恋人にしか愛情を抱けない母――

まだ中学生の子どもを放置したまま、恋人との出奔を繰り返す母――

その中で、生きてきた子ども――

裕貴の殴られる痛みが、一臣から言葉を奪っていた。

掛けられる言葉はなかった。

裕貴は知っている――

殴られる痛みも、その脅威も――

それを知った上で、この少年は、冷酷にその力を行使するのだ。

その威力で、人の命を奪えることを知っていながら――分かっていながら、 、 、 、 、 、 、 、ボーダーを越えようとしている、 、 、 、 、 、 、 、 、 、 、 、 、 、――

過ちではなく、故意に人の命を奪うことのできる意志――それは狂気だ。

感情的になってやり過ぎたわけでもなく、打ち所が悪くて殺してしまうわけでもない――

この一撃で死ぬ、と分かっていて、冷静に振り下ろす拳は、もはや狂気だ。

それは――この少年の持つ狂気だった。
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