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New Moon

Mid Night ヨコハマー夜明 7

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**********

横浜の街の陽が暮れた。

夜の帳が覆う中で、安普請のアパートの弱々しい蛍光灯が、裕貴と一臣を照らしている。

陽に灼けてささくれた畳の上にしゃがみ込んだ裕貴が、黒いボストンバッグのジッパーを開けた。

まるで何かの儀式のように、バッグの中からガソリンの詰まったガラス瓶をひとつひとつ取り出して、畳の上に並べていく。

ちょうど十本、並んだところで、裕貴の手は止まった。

最初にここで、このバッグを見たときは、全部で五本の火炎瓶があった。その後、浩輝と計画について話しあった時、裕貴はヤクザを巻き込んで戦争をするのだから、後十本の火炎瓶を用意しろ、と言っていた。

十五本あるはずの火炎瓶は、今、目の前に十本しかない。

一臣が、視線をあげると、裕貴がにやりと嗤いかけてきた。

「残りは浩輝が持ってる」

なるほど。浩輝が事前に、自分が使う分は抜いておいたのだろう。すでに浩輝の準備は整っている、ということだ。

「おまえ、ライター持ってっかよ?」

裕貴の問いに、一臣は無言でポケットに突っ込んだ手を開いて見せた。そこに小さな百円ライターが載っている。

「お、準備いいじゃん」

裕貴が悪戯っぽく笑った。

決行日は今日だ、と分かっていた。覚悟もすでにできている。

ライターくらい用意していて当然だった。

一臣は、黙ってライターをポケットにしまった。

「半分、持ってけ」

言われて、一臣は、並んだ瓶を持参したショルダーバッグに詰めた。ガソリンの入った五本のガラス瓶の重量が、すしりと肩に乗る。

ガラス瓶の周囲とその上に、クッション代わりのタオルを押し込む。途中で、ガラス瓶が割れるのを防ぐためと、匂いが漏れないようにとの配慮だった。

裕貴は立ち上がると、一臣にスタンガンを手渡した。

自分が持つのか、と問うつもりで視線を向けると、裕貴が軽く顎をあげた。

「これはおまえが持っとけ」

それから裕貴は、バッグの中から最後に取り出した改造モデルガンを握った。

それをちらりと見て、無造作にジーンズの後ろに押し込む。

裕貴は、携帯電話で時間を確認すると、ふんと鼻を鳴らしてから、それをポケットにしまい、代わりに煙草を引っ張り出した。

「吸うか?」

一本咥えてから、からかうような口調で一臣を見上げる。

「――ああ」

そう言って、一臣が手を伸ばして一本、抜き取ると、裕貴はぽかんとした表情を浮かべた。

「ウソだろ…、おまえ、タバコなんて吸えんのかよ」

「そんなバカ面してると、小学生に見えるぞ」

煙草を咥えて、一臣がそう言うと、裕貴は本当に小学生のようにぷっと頰を膨らませた。

「うるせぇな」

そこで気がついた。どうやら裕貴は、自分の童顔を気にしているようだ。

一臣は、思わず吹き出してしまった。

「てめぇ、笑ってんじゃねぇよっ」

裕貴は、自分の倍はある一臣の腕を拳で殴りつけた。一臣が特別、鍛えているとか、筋肉隆々というわけではない。裕貴が華奢過ぎるのだ。

まだ、少年特有の線の細さが抜け切れていない。そのくせ、顔の輪郭には子ども子どもした丸みを残している。だから、歳より幼く見えるのだろう。

こんな少年が、これから市内最大不良グループとヤクザを向こうにしようというのだから、怖いもの知らずの大莫迦者としか言いようがない――それとも、裕貴の頭の中には、けっして負けない算段が出来上がっているのか――

一臣は、受け取ったスタンガンをバッグにしまってから、隣で煙草をふかしている少年をそっと窺った。

こいつの隠し玉はなんだ――?

一臣と裕貴は、それぞれ別々にアパートを出た。

裕貴はヘルメットもかぶらず、トレードマークのショッキングピンクのバイクに跨ると、暗い道路へと消えていった。

一臣は、そのまま歩いて駅へと向かった。

自分の計画は、うまくいくのだろうか、という不安がちらりと一臣の頭をよぎった。

計画を聞いて、裕貴は悪くない、と笑ったし、浩輝はなにも言わなかった。

もしも、浩輝が逃げきれなければ――もしも、裕貴が捕まってしまったら――

悪い想像がせり上がってきて、一臣はそれを振り切るように軽く頭を振った。

最悪のことは想定しておけ、でもそれに立ち竦んでも意味はない――

むしろ一臣の役割は、最悪の状況になったときに新たな打開策を考えることだ、と自負していた。

今のところ、自分のできることは、頭を使うことだけだ。

それしか、できない――
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