スポンサー広告

スポンサーサイト

 ←Mid Night ヨコハマー夜明 16 →Mid Night ヨコハマー夜明 18
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。



もくじ  3kaku_s_L.png ごあいさつ
もくじ  3kaku_s_L.png Morning Moon
もくじ  3kaku_s_L.png TOXIC
もくじ  3kaku_s_L.png Crescent Moon
もくじ  3kaku_s_L.png BROTHER
もくじ  3kaku_s_L.png DIRTY SITUATION
もくじ  3kaku_s_L.png New Moon
もくじ  3kaku_s_L.png Killer Street
【Mid Night ヨコハマー夜明 16】へ  【Mid Night ヨコハマー夜明 18】へ
  • TB(-)|
  • CO(-) 
  • Edit

New Moon

Mid Night ヨコハマー夜明 17

 ←Mid Night ヨコハマー夜明 16 →Mid Night ヨコハマー夜明 18


「――あの人か」

新城の姿が遠くなってから、一臣は言った。

「ん?」

振り向いた裕貴に、スタンガンを見せた。

「おまえにこれをくれたの、あの人だろ?」

裕貴は、手の中のスタンガンをちらりと見てから、下から覗き込むように一臣を見上げた。

「ついでに昨日、あそこにブツがあるって情報も――あの人が教えてくれたのか?」

それを聞くと、裕貴はにっこり笑った。

「おまえ、やっぱ頭いいな」

そう言うと、裕貴はジャケットのポケットに、現金の入った封筒を無造作に押し込んで、ぶらぶらと歩き出した。

一臣もその後に続く。

あの新城というヤクザ者――あれが裕貴の隠し球だったのだ。

裕貴に情報と武器を与えていた男――ひょっとしたら武器長達の資金も、あのアパートの隠れ家も、出処はあの男かもしれない。

本気だったのだ――と、思った。

ヤクザになるために、顔を売る、とこの少年は言っていた。

その言葉の真剣さを疑ったことはなかったが、真面目に取り合ってもいなかった、と一臣は今さらながらに気づいた。

たった十四歳の少年が、ヤクザになどなれるわけがない、とも、きっとどこかで思っていた。

だから、裕貴がヤクザになると言ったとき、それは本気だろうとは思ったが、アイドルになりたいとか、芸能人になりたい、というような言葉を聞くのと同じように受け止めていた。

それは、本心なのだろうが、なれるわけがない――と。

しかし、どうやら自分はまたしても、読み違いをしていたらしい。

この少年は、本気でヤクザになる足掛かりを見つけている。

そして、たった十四歳で、本物の暴力団組織を潰してしまった。

もちろん、あの新城という男の助力もあっただろうが、ほとんどの計画は裕貴が考え、実行に移したものだ。

やるかもしれない、こいつなら――

一臣は、そう思った。

莫迦げた子どもじみた発想だと思った。

不良少年にありがちな、自分よりさらに悪どい力への憧れだと――

けれど、裕貴には、すでにその力がある。

悪知恵と怖いもの知らずの度胸で、彼は本当にヤクザになるだろう、と一臣は思った。

それでも、自分はこの少年とともにいたいのか――

一臣は、ポケットから携帯電話を取り出した。

昨日から、数え切れないほどの着信とメール受信が入っている。

すべて、母親からだ――

それにちらっと目を走らせて、一臣はそのまま携帯電話を閉じた。

目を挙げると、その様子をじっと見ていた裕貴と視線が合った。

「帰るか――?」

裕貴の口調は何気なかった。

もう、帰ろうか――そういう尋ね方だった――もしかしたら、本当にそういうつもりで言ったのかもしれない。

けれど、一臣は力強く首を横に振った。

「いや、俺は帰らないよ」

「そっか」

裕貴はそれだけ言うと、急に明るい口調になって、腹が減ったからなんか食いに行こうぜ、と笑った。

金が手に入ったから、なんでも食える、と無邪気に喜んでいる。

その少し後ろを歩きながら、一臣も微笑んだ。

まぁ、帰るだろう――夜になれば。

明日は学校だし、塾の日でもある。

それらすべてを放り出す気などない。

それは、けっして無駄にならない、と一臣は思った。

親や、学校の先生に期待されているからじゃない、約束された将来のためでもない――
この少年、裕貴の片腕になるには、きっと自分には頭脳が、考える力と知識が必要になる。

この少年がヤクザになると言うのなら、それでも別に構わない、と思った。

一臣は、自分の意志で、レースの中から出てきたのだ。もう、そちら側に戻るつもりはない。

けれど――レースの中と外は表裏一体だ。

柔いレースの庇護がない世界で生きるのならば、なおのこと、レースの中を利用することは重要だ。

そのために、知識と考える力はけっして無駄じゃない。

夜には、家に帰ろう。

でも、きっとまた、明日、この少年の元に戻ってくる。

ヤクザだろうと、犯罪者だろうと――

自分は、この少年の変わらない明日になると決めたのだから。

今日と変わらない明日――

もう、裕貴は、明日は来るのか、とは聞かなかった。

聞く必要なんかない――
関連記事
スポンサーサイト



もくじ  3kaku_s_L.png ごあいさつ
もくじ  3kaku_s_L.png Morning Moon
もくじ  3kaku_s_L.png TOXIC
もくじ  3kaku_s_L.png Crescent Moon
もくじ  3kaku_s_L.png BROTHER
もくじ  3kaku_s_L.png DIRTY SITUATION
もくじ  3kaku_s_L.png New Moon
もくじ  3kaku_s_L.png Killer Street
【Mid Night ヨコハマー夜明 16】へ  【Mid Night ヨコハマー夜明 18】へ

~ Comment ~

管理者のみ表示。 | 非公開コメン卜投稿可能です。
  • 【Mid Night ヨコハマー夜明 16】へ
  • 【Mid Night ヨコハマー夜明 18】へ
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。