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Killer Street

第四章『殺したいほど愛したい』4

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いつまでも、抜けない堅気の自分――

だから、橘の気持ちも、分からない――

きっと、橘も、慧の気持ちなど、理解できないに違いない。

彼ら、極道の人間にとって、死はあまりにも身近すぎる。

橘の下に身を寄せてからのこの半年の間、慧は、これまでの人生に比べるべくもないほどの人の死に直面してきた。敵対していた組の長、橘の以前の恋人、その兄――抗争に巻き込まれて命を落とした組員たち――そして、内藤 啓介――

そのうちの何人かは、慧の目の前で、橘 裕貴自身の手によって命を絶たれた――自分の命令ならば、どんなことでも聞き、手足となって使える舎弟がいるにも関わらず、彼は自分の手でその引金を引いた――

慧が出会うずっと前から、橘の手はすでに血で濡れていたに違いない。ヤクザを辞めて、幸せに、などという言葉が、荒唐無稽なおとぎ話に聞こえるほどに――

戻れるはずがない――

これまで多くの命を奪ってきておいて、口を拭って、何事もなかったかのように、堅気に混じって生きられる筈もない――少なくとも、橘がそういう人間ではない、ということぐらい、慧にでも分かる。

人の命を奪ったことを後悔している、とか、懺悔の思いがある、という意味ではない。橘にそんな気持ちはないだろう。

そうではなくて、彼は――なんというか――

自分の中の邪悪な部分を見定めて、それとともに生きている――という感じが、慧にはするのだ。

社会とはけっして相容れない自身の悪意を、彼は見て見ぬ振りはしない。利己的な自分に、言い訳することなく、生きている。

だからといって橘の行為が正当化されるなどとは、慧も思わないが、その邪悪な魂に自分が惹かれていることには、気づいていた。

橘のように、自分の利益のために他人の命を犠牲にしてきた人間は、自分の命の重さをどう捉えているのだろうか、と慧はふと思った。

他人の命に、眉ひとつ動かさずに銃弾を放ってきたくせに、きっと自分が死にたいとは思っていないだろう。

そういう意味では、橘だって、命意地の汚い極道者なのだ。弱者に生きる価値はないと言いながら、強者の自分の命を惜しむ――

それと同時に、慧は、橘の中にある種の諦観も感じていた。

明日があるか分からないから、明日の約束はしない――

橘の生き方は、そんな風にも見える。

だから、自分を愛してくれないのだろう、と思うほど、慧も自惚れはしないが、彼の傍若無人な態度は、時に自暴自棄とも言える境地に達していることがある。

自分の命を的にして、それをどこかで面白がっているような――

橘のように、自らの手で、他人の命を奪って生きてきた人間は、ある日突然、自らの命が他人に奪われることになることもまた、そういう巡り合わせなのだと、どこかで受け容れているようにも思えた。

もちろん、あの橘 裕貴が、そう簡単に命を取られることなど許す筈はないだろうが、彼を見ていれば、その刹那的な生き方のどこかで諦めも見て取れるのは、確かだ。

命への諦め――

幸せへの諦め――

橘の住む世界は、血と裏切りで溢れている。

どんな信頼も、どんな愛情も、自分の命と引き換えとなったら、すべてが無に帰る。打算と、駆け引きと、略奪に満ちた裏社会に、橘は生きているのだ。

そして――橘はきっと、そんな生き方しかできない。

正しいとか、間違っているとかいうこととは別の意味で、そう思う。

そういう生き方しか、できない人間もいるのだろう――

いくら堅気は捨てた、裏社会で生きて行く、と定めたとはいえ、慧は、なかなかそこまでの心境には至ることはできない。

そんな生き方、苦しくないわけはない。

誰も信じず、誰も愛さない――地べたを這いずり回るしかない――裏社会の底辺に生きる者たち――

地べたを這いずって、他人の足を引っ張り、裏切りを繰り返す――

そんな世界に身を置く者にとって、あまりにも身近すぎる死は、時に甘美に感じる瞬間もあるだろうか――

死んでしまえば、もう苦しむことはないのだ――裏切りも、大切な者を失うつらさを味わうこともない――

慧は、窓の外に遠く光るネオンをじっと見つめた。
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