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Killer Street

第四章『殺したいほど愛したい』5

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その時、カチャリと小さくドアの開く音がして、慧は振り返った。一瞬にして、物想いから我に返ると、寝室から出てきた橘が、窓から差し込む淡い灯りすら眩しいのか、目を眇めてこちらを見ていた。

「――起こしてもうた?」

慧が振り返ってそう言うと、橘はどちらとも判じかねる仕草で、肩を竦めた。

「…眠れねぇのか?」

橘は、ぶらぶらとソファに近寄り、ソファテーブルに置かれた煙草を取り上げた。一本咥えて、火を点ける。暗い部屋で、ライターの炎が、淡く橘の鼻先を照らした。

橘はソファには座らず、立ったまま、先ほどまで慧がぼんやり眺めていた窓の外に視線を投げた。

静かな室内で時折、橘が煙草の煙を吐き出す、溜息のような音だけが聞こえる。

その息遣いが、不意に慧の胸を締め付けた。

溜息なんかじゃないと分かっている。

橘は、ただ煙を吐き出しているだけだ。

それでも、そんな風に――まるでひとりきりでいるような橘を見ていると、奇妙な寂しさが慧を襲った。

俺が傍にいるのに――

橘には、時々、こんな風に感じることがある。

傍にいるのに、声を掛けることも、手を伸ばすことも、ためらわせる空気――

話しかけるな、とも、触るな、とも言われたわけではない。それでも、慧は傍で橘を見つめていることしかできない――そんな時が――

不意に橘の視線が、慧に向いた。

その瞳には、もうそんな孤独の色はなかった――いつもの橘だ。

橘が、唇の端に煙草をぶらさげたまま、こちらを見て、ふっと笑った。

「…ヤろうぜ、慧」

黙ったまま、短くなった煙草を灰皿に押し付けると、まるで、なにか飲むか、と尋ねるような調子で橘は言った。

橘の唐突な申し出に、慧は一瞬、なにを言われているのかと思ったが、すぐにその意味を理解した。

「寝られねぇんだろ? ――俺も…」

最後の言葉が、思わず漏れたという感じで、語尾がそのまま橘に飲み込まれた。

――俺も…? 

橘も、眠れなかったのだろうか――

ぼんやりとそんなことを考えていた慧を見て、橘がにやりと笑った。

「家に籠ってばっかじゃなぁ。運動が足んねぇんだ、運動が」

そう言って、両の拳の骨をパキパキと鳴らした橘を見て、慧は思わず呆れた。

この男が、セックスをスポーツの一種くらいにしか思っていないのは、分かりきっていることだが、この態度はあんまりじゃないだろうか。

「…おまえな、もうちょっと可愛げのある態度、取れへんのか」

慧が溜息(これは本気の溜息だ)を吐くと、橘がふん、と鼻先で笑った。

「可愛げぇ?」

なんの前触れもなく、橘がソファに座っていた慧の隣に腰をおろした。

その瞳が不意に淫らな光を放つ。

唐突に、慧の首に橘の腕が回された。

「…なんだよ。言って欲しいのか? ――抱いてくれ…って」

耳許でそう囁かれ、背筋がぞくりと震えた。

自分の単純な身体の反応に、呆れてしまう。

橘も、体を離して、慧の反応を面白がるような表情で、覗き込んできた。

「――いつもいつも同じ手に引っ掛かるかい」

その同じ手口にすっかり嵌っているくせに、強がってそう言ってみる――体の芯が熱い――。

すると、橘がふっと表情を和らげた。

「――引っ掛かれよ、慧。――言い訳が必要だろ…? 俺を抱くのに――」

首筋を軽く吸われて、慧は思わず目を閉じた。先ほど、溜息を零した唇から、今度は湿った吐息が零れる。

橘を抱く言い訳――この不埒な男にどうしようもなく欲情してしまう自分に対する言い訳――

「――そんなん、いるか…」

言い訳なんて――今さらどんな言い訳も、自分の欲望を誤魔化すことなんてできない。

橘に誘われたから――挑発されたから――違う――この男を堪らなく愛しているからだ。

自分にぴったりと押し付けられている男の身体に腕を伸ばす。

寝るときは下着一枚の橘の裸の上半身を掌で撫でると、耳許に熱い息が落ちた。

そのまま唇を合わせ、慧は橘の体をソファの上に横たえた。

ベッドに移動しようか――という考えが頭を過ぎったが、ほんの数メートルのその距離さえも、もどかしいほど遠く感じる。

絡んだ舌を解いて、自分が組み敷いている男の顔を見下ろした。

すでに欲望に潤んだ目つきで、橘がこちらを見上げている――目を逸らすことはない。

慧は、体をずらすと、下着の上から唇で、その男の堅さを確かめた。

「……ん…っ」

橘の腰が微かに震える。

慧の下で、焦れたように足先がソファの上を滑った。
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