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Killer Street

第四章『殺したいほど愛したい』7

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**********

その日の夜、橘は組の若い衆と、行きつけの料理屋に来ていた。

殺し屋探索になんらかの進展があった――わけではない。

相変わらず、橘の命を狙う殺し屋の手掛かりはなかったし、雇い主が新城組の持ち込んだみなとみらい開発地区の情報をもたらした横浜市議会議員だろうという検討はつけていても、そちらも確たる証拠は見つからない。

ではなぜ殺し屋から身を隠していた橘が外を出歩いているかというと、もうこれ以上、傍若無人なこの男の短気を抑えきれなかった、というのが真相だ。

若頭の笈川がなにを言おうと、幹部組員が土下座をしても、もう橘を閉じ込めておくことはできなかったのだ。

「仮にもおとこを売る稼業がいつまでもこそこそしてられるか」

と、橘は開き直った。

そして、そこを突かれると、組員たちも返す言葉がない。それは橘の言うとおりだからだ。

いつまでも逃げ隠れしてはいられない――

それは初めから分かっていた。橘はヤクザの組長なのである。

命など、殺し屋など現れなくても、もとから狙う連中は後を絶たないし、それが異例の事態というわけでもない。

腕の立つプロの殺し屋に狙われていることで危険は増すが、だからといって、あそこの組長は命が惜しくて、家に籠っている――という評判が立てば、橘組の今後のシノギにも関わる。

そして、若くして組長になった橘には、組織として敵対している連中だけでなく、それを妬む味方も多いのだ。本来、同胞である筈の音羽会傘下の組からだって、そんな悪評判が拡まらないとも限らないのである。

そして、橘の一睨みで、組員たちは引き下がらずを得なかった。

「てめぇら、そんなに俺の命が惜しいんだったら、死ぬ気で殺し屋、探し出せ。それができねぇんだったら、舎弟の無能が親爺を殺すって覚えときな」

それを言われては、もう組員たちもなにも言うことはなかった。

組長の言うとおりである。組長の命を堂々と狙う輩を野放しにしておくことは橘組の名折れで、むざむざとその命を捕られたとあれば、それはもう舎弟の無能だ。

そんなわけで、組員たちは沈黙し、数日の籠城の後、橘は、行きつけの料理屋で涼しい顔で酒を飲んでいた。

橘の横で、日本酒を舐めていた慧は、ちらりとその顔を横目で窺った。

橘の言うことはもっともなのだろうが、それにしたって大した心臓だと思う。

命を惜しんで組長が、家から出ないでは格好がつかない、というのは、ヤクザの理屈としては慧にだって分からなくもない。しかし、具体的な危険に晒されていないときならばまだしも、現実に自分の横を弾丸が掠めていったそのすぐ後に、よく平気な顔をして外をふらふらできるものだ、と思う。

橘は、呑気な顔で、刺身を肴に酒を飲み、煙草をふかしていた。数日ぶりに解放されたせいか、機嫌がいい。

その向かいでは、対照的に、いつにも増して不機嫌そうな笈川が、この世の終わりのような陰気な顔で酒猪口を傾けていた。

「その仏頂面、なんとかなんねぇのかよ、酒が不味くなるぜ」

橘が、笈川に向かってからかうような声を出した。

「仏頂面は昔からだ」

ほとんど口を動かさずに、笈川が唸るように言った。

確かに慧も、上機嫌でにこにこしている笈川など見たこともないし、想像もつかない。

慧よりもっとつきあいの長い橘もそれに気づいたのか、煙草を片手に吹き出した。心なしか、笈川の隣に陣取っていた牛丸も、笑いを堪えるかのように唇を必死に引き結んでいるように見える。

笈川は、面白くもないという顔のまま、隣の牛丸を睨みつけた。

ちょうどその時、笈川の携帯電話が鳴り出した。着信画面を確認して、笈川は電話を受けながら立ち上がった。

「――ああ…。で――?」

笈川は話をしながら、店を出て行った。その後ろを、別のテーブルを囲んでいた村尾が追う。

酒を飲んでいながら、ヤクザという人種のこの鋭さには、毎度のことながら慧は感心する。特に声を掛けなくても、組長や若頭をけっしてひとりにはしない。こういう気遣いができない者は出世できない世界だからだろうが、本当に良く気が回る、と思う。
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