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Killer Street

第四章『殺したいほど愛したい』9

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深夜の事務所に到着すると、橘は怒った顔のまま、定位置のソファに体を投げ出し、面白くもないという表情で煙草に火を点けた。

「殺し屋が司にコンタクトしたみたいだ」

なんの前振りもなしに、事務机に寄りかかった笈川が話し出した。

カフェイン中毒に近い橘のためにコーヒーを淹れようとしていた舎弟を手伝って、コーヒーメイカーの前にいた慧は、その声で振り返った。

「ただし、さっきも言ったが、連絡は電話に限ってる――直接、会うことはどうやらなさそうだ、というのが司の話だ」

「どういう意味だ、そりゃ」

橘が視線をあげて、笈川を見た。

「言葉どおりだ。殺し屋は、依頼人とは会わずに依頼を受けているらしい」

「そんなことできないでしょう? だって、殺しの標的だって、どうやって指定するんです?」

村尾が、半ばいきり立ったように言った。

「司は裕貴の名前を尋ねられたと言っていた――それとあいつ自身の名前だ」

「名前?」

村尾の問いに笈川は頷いた。

「標的を調べて、写真を送ると言ったそうだ。それに間違いがなければ、自宅のドアの下に丸印を書いた紙を挟んでおいてくれだと」

それを聞いた橘が口笛を吹いた。

「そりゃ、おっかねぇや」

唇の端に笑みが浮かんでいる。

「標的はどのみち洗わなきゃならねぇからな――それに、そのやり方ならてめぇの面も割れる心配はねぇ。おまけに依頼人にとっちゃ、てめぇのヤサも割れてるってことだ」

笈川が頷いた。

「依頼人が、報酬をすっとぼけたり、オデコ*17にタレ込んだりしたときの予防にもなるな」

標的の名前だけで、相手を探し出すことができ、かつ自宅にその写真が届けられるということは、名を名乗った依頼人にとっては、裏切れば、次に標的にされるのは、自分だということを容易に彷彿とさせる。殺しを生業とする者に、住む場所も、簡単につきとめられている――それはどんな約束事よりも、重い意味となって依頼人に響くだろう。

そんなもの、と村尾が吐き捨てるように言った。

「てめぇの名前なんていくらでも嘘が言えるでしょう」

「嘘の名前じゃ、どのみち標的の確認はできねぇ」

相変わらずニヤついた顔のまま、取引はご破算だ、と橘は言った。

確かにその通りだ。依頼人が警戒して、偽名を名乗れば、殺し屋は当然、依頼人を特定できない。依頼人が特定できないということは、標的の確認写真も届かないということになる。そうなれば、当然、標的の確認もできず、依頼はなかったことになる。

村尾が舌打ちをして横を向いた。忠誠心の篤い村尾は、橘に反発しているわけではない。ただ、殺し屋に辿り着く糸が途切れることに苛立っているのだ。

こんなやり方をされては、殺し屋を探り出すことすらできない。

慧も不安を覚えて、ソファに体を投げ出している橘を見つめた。

その存在すら分からないプロの殺し屋相手に、本当に彼を守りきることができるのだろうか――

今ここにある筈のない銃口が、橘に狙いを定めるのが見えるような気がして、慧は体を震わせた。

「――司の周りを張ってる若いのが、写真を置きにくる殺し屋をうまく見つけられるといいがな…」

笈川が、溜息混じりにそう言って、腕を組んだ。

そうか――まだ、殺し屋に行き着く可能性はゼロではないのだ、と慧は、半ば無理矢理、気を取り直した。

ターゲットの確認には、どうしても殺し屋自身が依頼主の近辺に姿を現さずを得ない。そこを捕まえることができれば――

しかし、慧のこの淡い期待に冷水を浴びせたのは、狙われている橘自身だった。

「ふん、どうだかな。依頼人の司の身辺を洗うんだって、周りをうろちょろしたに決まってる。それでもこっちの目につかねぇんだ。写真一枚、送りつけようと思ったらどうにでもなるさ」

投げ遣りにそう言うと、橘は煙草を咥えた。

やっと見えた小さな希望を、命を狙われている本人に否定されて、慧は、丹精込めて世話をした花の芽が、やっと芽吹いた瞬間に、情け容赦なく踏み潰されたような気持ちにさせられた。落ち込んだまま、コーヒーを橘の前に運び、気落ちしたまま、その隣に腰を下ろした。

舎弟が、その場にいた組員にコーヒーを満たしたカップを配ると、事務所がコーヒーの香りに包まれた。

集まった幹部組員たちとその子飼いの舎弟たちは、組長である橘の好みに合わせて濃いめに淹れられたコーヒーを片手に、ふっと一息入れる空気になった。



17...警察官
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