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Killer Street

第四章『殺したいほど愛したい』10

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コーヒーを啜りながら、笈川がその沈黙を破った。

「――さっき、なにを見たんだ?」

その問いが自分に向けられたと分かっているのだろう。橘がちらりと視線をあげた。

軽く舌打ちをして、橘は片手でぐしゃぐしゃと髪を掻き回した。

「――あいつがいたんだよ」

「あいつ?」

村尾が訝しげに片目を眇める――彼の片目は、半年前に起きた抗争事件で潰れたままだった。

「殺し屋――」

橘の言葉に、事務所内が騒ついた。

「あの料理屋に殺し屋がいたって言うのか?」

笈川が、落ち着いた声で問い質すと、橘は面倒そうに、ふんと鼻を鳴らした。

「――間違いねぇな」

「なぜ分かった?」

笈川の問いに、橘は凶悪に顔を歪ませた。

「あの野郎――こっちに向けて殺気を出してきやがった」

殺気――ドラマや映画の中ではそういうものを感じる瞬間、というのを時々、見かけるが、そんなものを現実に感じ取れるのか、と慧は驚いた。

隣に座った慧が、ぽかんとした顔で自分を見つめていたのに気づいたのか、橘が慧を見てから再び、舌打ちをした。

「誰かの視線を感じるってのは、あるだろうよ。それと変わんねぇ。――あの時、誰かがじっと俺を見てた。店を見回したら、あいつと目が合った、 、 、 、 、 、 、 、 、――」

それを聞いて、笈川が片眉をあげた。

あいつと目が合った、 、 、 、 、 、 、 、 、――? どういう意味だ」

「目が合ったんだよ。そのまんまだ――あの野郎、こっちを見て、ニヤニヤ嗤ってやがった」

その時のことを思い出したのか、橘は瞳を怒りにギラギラさせて、吐き捨てるように言った。

「すぐにあいつが店を出たから、後を追っかけようとしたんだけどよ――秋光のバカ野郎がデカい図体しやがって…」

橘は、半ば八つ当たり気味に、あそこで秋光がジャマしなけりゃ、追いかけられたのに、と言った。

そのまま店を出てしまったので、秋光と言葉を交わすことはなかったが、偶然、同じ店にやって来ただけの秋光が聞いたら、心外だろう。たまたま出入り口でぶつかったのは、秋光のせいではない。

「だったら、なんであん時、俺に言ってくんなかったんすかっ!? すぐ追っかけたのに」

料理屋で入口に向かって駆け出した橘に、いち早く追いついていた若い冨樫が、悔しそうに言った。

ところが橘は、不意に顔から表情を消した。

「裕貴――?」

その態度の変化を敏感に嗅ぎ取った笈川が、訝しげな声を出した。

「――なんつっていいのか分かんなかった」

橘は不貞腐れたようにそれだけ言った。

「は?」

冨樫がきょとんと橘を見つめる。

「おまえになんつっていいか分かんなかったんだ――どんな男か――説明できなかった」

面白くもないというようにそう言うと、橘はソファの背にだらりと体を預けた。

「説明できないってどういうことだ?」

笈川はまだ納得できないという表情で橘を見ている。

「だから、説明できなかったんだよ。どんな顔とか――」

ますます意味の分からないことを言い出した橘に、笈川が顔を顰めた。

「歳は多分…、俺とかおまえくらいじゃねぇか?」

そう言って、橘は笈川に顎をしゃくった。

「服装は…どこにでもあるような濃紺のスーツで…、顔も…――なんつーか、特徴ねぇっていうか…、通勤時間に駅に行ったら、どこにでもいそうな顔だぜ」

先ほど橘たちがいた料理屋は、個人経営の少々、高級感のある和食の店だったが、店の仕様は居酒屋のようなもので、一般の客が入りづらいというような店ではない。

橘が気に入って贔屓にしている店だから、店主は橘がヤクザだということを知っているだろうが、橘組は、利益にもならないのに堅気の店で揉め事を起こしたりはしないから、黙って目を瞑っている、という感じだった。

だから、あの時も、堅気の客の目につきづらい、奥まった座敷に陣取っていたとはいえ、他にも客はいたし、そのほとんどが中年のスーツ姿の男たちだった。店の外だって似たようなものだろう。橘や笈川くらいの三十代のスーツの男たちなど、通りにも、多勢、行き来していたに違いない。
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