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Killer Street

第四章『殺したいほど愛したい』11

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「――三十くらいのスーツの男、捕まえてこいって言われてたって、おまえも困るだろうが」

橘が、じろりと睨みつけると、冨樫は、はぁ、と曖昧に返事をして下を向いた。

「…特徴のない顔か…」

笈川はそう言うと、自分が寄りかかっていた事務机の上に、コーヒーカップを置いた。

「なるほど、殺し屋に向いてそうだな。人目につかない特徴のない男じゃ、目撃者も出づらい」

「そりゃあ、司の周りをウロつく男たちの中から探し出すのはしんどそうですね」

幹部舎弟の葛西が、やれやれというように肩を竦めた。

「あいつ、まだ客取ってんのか?」

橘が尋ねると、笈川が首を横に振った。

「もう店には出てないらしい」

それを聞いて、慧はほっとした。もともと、同棲相手の売春業に従事していた司だったが、彼はその仕事を嫌悪していた。辞めてしまいたいという気持ちはあっても、ほんの十代の子どもの頃から、そんな仕事しかしてこなかった自分に、堅気の仕事などできるのだろうか、という葛藤を抱えていたことも、慧は知っていた。

新しい人生を切り開く一歩を踏み出すまでには至らなくても、少なくとも、司の心をすり減らせる仕事からは身を引けたのだ、と思うと慧は嬉しかった。

しかし、笈川は、こともなげに慧の思いを打ち砕く言葉を口にした。

「ただ、今までの得意客は、まだ個人で取ってるそうだ。そいつらの顔は葵たちに回ってるから、それは除外できるだろうがな」

それにショックを受けたことが、顔に出てしまったのだろう。橘が、慧をからかうように言った。

「なにもかも急になかったことにできるかよ。世の中、そんなに甘かねぇんだ。ウリセンにはウリセンの義理もあるってこった」

下を向いてしまった慧に、橘の人の悪い笑い声が聞こえた。

「殺し屋野郎が男好きじゃなきゃいいけどな。司のお得意に紛れ込んでましたなんて、笑えないぜ」

「常連の裏は洗い済みだ」

橘は、茶化すつもりだったのだろうが、笈川はそれを真面目に考えていたようだ。すでに調査済みとは、用意周到である。

しかし、これだけ緻密に張り巡らされた探索の網に、殺し屋はちらとも掠ってはいなかった。

もともと、その若さと、手下の不良少年たちの数にものを言わせて、探索や調査が主な仕事となっている葵など、ほとんど事務所に戻ってくることもできないでいる。

葵は、年齢もまだ二十歳と、若いし、その容貌は美少女のそれだ。ウリセンの司にはりついていても、せいぜい仲間だと思われるだけだろうと、身辺警護を任されていた。

他の舎弟たちも、入れ替わり立ち替わり、新城組と繋がっている市議会議員、裏の殺しのルート、と洗える限りの場所を洗い尽くしている。

それでも殺し屋の情報の欠片すら見つけることができないのに、当の殺し屋が、橘自身の前に現れ、不敵にも顔を突き合わせて行った。

面など割れても、素性がバレる筈がないという自信があるのだろう。

そして、その顔を晒しても、必ず、標的を仕留めるという自信が――

慧は改めて、殺し屋の存在に恐怖を覚えた。

橘を――慧のすべてを――その指先から、攫っていこうとしている存在に――

「…橘さん、そいつのツラ、なんて言っていいか分からなかったって言いましたけど、次にそいつに会ったら見分けられますよね?」

いつもは寡黙な牛丸が、珍しく低い声を出した。

「あいつのツラは忘れねぇよ」

橘がふんと鼻を鳴らすと、牛丸が深く頷いた。

「次があったら俺に――逃がしゃしません」

もともとの強面の上に、一体、どんな渡世だったのか、と首を傾げたくなるほど無数の傷跡が縦横無尽に走っている顔面を歪ませて、牛丸が唸るように言った。昔気質のヤクザの牛丸は、下半身に関しては節操など持ち合わせていない橘を、極道者として敬愛している。その忠義ぶりは、端から見ていても分かるほどだ。

だから、橘の命を狙う殺し屋の存在は、牛丸にはとても野放しにしておけるものではないのだろう。牛丸は、必ず、仕留めてみせるという気迫にみなぎっていた。

やはり親爺のためなら命など惜しくはないというだけの惚れ込みようは、大半の組員にも共通している。他の舎弟たちも、一様に頷いた。

それを見た橘が不敵な笑みを浮かべた。

「橘組のけじめのつけ方を見せてやれ」

その声に、男たちは声を上げて、応えた。







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