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Killer Street

第五章『死ぬまできみを愛してる』5

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橘は、好んで慧をからかって面白がる傾向がある。その橘の前で、こんなに焦っているところを見せれば、調子に乗って、また人前でどんなことを言われるか分かったものではない。

慧は、慌てて、斉藤と知り合った経緯を話した――婚約者の浮気の詳細は省く――こんな話題を持ち出して、また橘が妙な刺激を受けては堪らない。

「――ほんで、持ってた指輪、返せたらと思って、今日、山下公園に寄ってみたら、偶然に会えたんで、返しただけやねん」

やっと事情を説明し終えると、葵が言った。

「なぁんか、冴えない平々凡々な野郎だったんですけどねー。でも目の奥がアブないカンジでさぁ。あんなヤツと気安く口きいちゃ、ダメじゃん、慧」

それを聞いて、葛西が再びゲラゲラと笑い出した。

「じゃあ、一度、橘組が念入りにあいさつしてやるか。親爺の情人イロに気安くコナかけてもらっちゃ困るからな」

本気で言っているわけはない。葛西は大体にして、すべてを冗談で済ませてしまうようなところがあるのだ。

「なんだ、葵。組長の情人、引っ掛けられてボーッとしてんじゃねぇぞ」

橘も、その尻馬に乗っかる。

「どんなツラなんだ? 俺の男にコナかけようなんて野郎は」

調子に乗って言い募る橘を、笈川が横目で見ながら、やれやれという顔をしている。

「だ、だからコナとかそういうんとちゃうくて…っ」

この話題を早く終わらせたくて、慧がそう言うと、葵が焼肉屋の天井を見上げて首を傾げた。

「あれぇ…? なんて言えばいいんだろ? だから…、平凡なサラリーマン面ですよ。駅とかにいっぱいいるじゃないですか、あんなヤツ」

男の顔を思い出そうと、葵は天井に視線をあげて顔を顰めた。

その言葉が、奇妙に慧の脳裏に引っかかった――同じようなセリフをどこかで聞いた。

通勤時間に駅に行ったら、 、 、 、 、 、 、 、 、 、 、どこにでもいそうな顔だぜ、 、 、 、 、 、 、 、 、 、 、 、――

橘が言ったのだ。あの殺し屋を目撃したときに、 、 、 、 、 、 、 、 、 、 、 、 、――

大胆にも、殺し屋が橘の前に姿を現したことを知らない葵以外の男たちの間に漂う空気が、一瞬にして緊張した。

まさか、山下公園で偶然、会ったあの男が、橘を狙う殺し屋なのか――?

慧は、急速に手足が冷えていくような感覚に襲われた。痺れたような感覚になった手の感覚を取り戻そうと、慧は無意識にパンツの脇に両手を擦りつけた。指先に、なにか硬いものが触れる――ポケットの中だ。

慧は慌てて、ポケットの中に手を入れた。指先に当たった感触が信じられない――

それを握って、慧はポケットから手を出した。テーブルの下で、その手を開く。

そこには、斉藤に返したはずの、あのダイヤのついた指輪が乗っていた。

「慧?」

様子がおかしいことに気づいたのか、橘が隣に座った慧に目をやった。

慧は、返事もできずに震える手の中の指輪を見つめていた。

笈川たちも、慧の手の上で光る指輪に眉を顰めた。

「――返したんじゃなかったのか?」

橘の問いに、慧は頷いた。

確かに返した。葵とともに立ち寄った山下公園で、偶然、会った斉藤に――

慧の手から指輪を取り上げて、斉藤は、それを自分のポケットにしまっていた筈だったのに――

「ナメられたな、葵」

橘は、片目を眇めた。その唇の端には笑みが浮いているが、目の奥が凶悪に光っている。

葵の顔からは、血の気が引いていた。

「す…みません…、俺…っ」

組長の命を狙う殺し屋と間近に相対しておきながら、それに気づかなかった失態に、言葉を失っている。

葵ばかりではない。慧自身も、まったく疑ってもみなかったのだ――二度も会っておきながら――

「…バカにしやがって」

牛丸が低い唸り声をあげた。

「あいつ…っ」

葵は、悔しそうに顔を歪めた。

「よく考えたらやっぱヘンだったのに…っ」

「なにがどうヘンだったんだ?」

笈川が、尋ねると、葵は唇を噛んだ。

「あの野郎…、俺を見てもびっくりしなかったんです」

顔を歪めたまま、葵が言った。

「…なるほどな」

葛西が納得したように頷いて、手元のビールを一口飲んだ。

「普通なら、初対面の男はおまえのツラに驚くか、紅くなる――だろ?」

葵は、葛西の言葉に、嫌そうに鼻に皺を寄せた。

葵は美少女然とした自分の顔を嫌悪している。可愛らしい見かけのせいで、舐められたり、侮られた過去が少なくないからだ。しかし、それはそれとして、自分の顔が、男たちを騒がせることは事実と認識しているのか、葵は、頷いてみせた。

「気持ち悪ぃけど、そうっすね」
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