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Killer Street

第五章『死ぬまできみを愛してる』7

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笈川の言葉に、橘の顔が凶悪に歪んだ。

「てめぇ…、慧をオトリにしようってのかよ?」

「これはチャンスだ。相手が素人ネスの情人だと侮っているなら、なおさらだ」

笈川は、指先で指輪を弄びながら言った。しかし、その言葉が終わるか終わらないかのうちに、橘は、勢い良く立ち上がった。その勢いで、テーブルの上のビールのグラスが倒れる。

「ふざけてんのか、一臣」

突然、険悪な雰囲気で立ち上がった橘に、店内の注目が集まった。

橘や、慧、笈川、葵は一見してヤクザには見えないかもしれないが、残りの舎弟は見るからに極道者だ。強面の男たちが顔を突き合わせているテーブルが物騒なムードに包まれ、店内の客も驚いているのだろう。

「落ち着くのはおまえだ、裕貴」

笈川は、うんざりした表情で、橘を睨みつけた。

「別に慧を裸で放り出せと言ってるんじゃない。見張りもつける。だが、この状況を利用しない手はないと言ってるんだ」

「てめぇっ」

橘が、ふたりの間に座った慧を乗り越えて、笈川に掴みかかろうと手を伸ばした。

「橘さんっ」

「橘っ」

向かいに座った牛丸と葵が、いきり立った橘を押さえようと、立ち上がった。慧も、慌てて橘の体を押し戻す。

短気に喚いている、自分より一回り小さな体に触れた瞬間、この手の中に今ある、この男を、どんなことをしてでも失いたくない、という気持ちが、慧の中で急速に膨らんだ。

失いたくない――絶対に――

「橘、俺にやらせてくれ――オトリ…」

慧が静かに、しかし、はっきりした声でそう言うと、橘の顔色が見る間に変わった。握られていた拳が、勢いよく慧の首元に伸び、あっという間に襟首を捩じり上げられる。

「てめぇ、ヌルいこと言ってんじゃねぇぞっ! 相手の腕は分かってんだろうがっ」

至近距離から慧を睨みつける橘の瞳が、苛立ちに燃えている。

それでも、慧は怯まなかった――怖くなんかない。

この男を失う以上の恐怖なんて、ない――

「そんでも、おまえの役に立てるんやろ?」

足を引っ張ってばかりの自分にも、できることがあるなら――

すがるような思いで、慧は、笈川を振り返った。しかし、笈川は、前を向いたまま、慧と目を合わせようとはしなかった。

笈川にとって、橘はなににも代えがたい存在だ。だから、橘を守るために慧を危険に晒すことを、笈川が後ろめたく思っているはずはない。それでも笈川は、慧の決意を後押しするような態度を見せず、感情を消し去った表情のまま、前を向いていた。

慧の決意に積極的に賛同する素振りを見せない笈川の態度に、慧は混乱した。

自分が提案したのに、どうして――?

やはりそれは危険な行為だと、笈川自身が分かっているからかもしれない。いくら橘のためとはいえ、慧の命を盾にするような行動を、本人にけしかけるには、笈川にも躊躇いがあるのかもしれない。

それだけ、危険が大きいということだ――

それでも――と慧は唇を噛んだ。

どれだけ、危険が大きかろうと、やるしかない――

橘の役に立てるなら、この男をこの手で守ることができるなら、自分の命なんて惜しくない――

慧は、自分の襟首を捩じり上げたまま、険悪な表情で睨みつけている橘の瞳を真っ直ぐに見返した。

「――俺にやらせてくれ――頼む」

慧の襟を鷲掴みにしていた橘の手に、さらに力がこもった。

殴られる――と慧が思わず目を瞑ると、唐突にシャツの首元が自由になった。

「――くそっ!」

乱暴に慧の襟から手を離した橘は、苛立ちを抑えきれない様子で、目の前の皿を片手で薙ぎ払った。

瀬戸の小皿が、床に落ちて砕ける。その鋭い破壊音が、再び、店内の客の注目を引いた。

「なに見てんだ、コラ」

牛丸が、凶悪なご面相で唸り声をあげると、こちらに視線を投げてきていた客たちが慌てて、目を逸らした。

「――でも…」

尖った空気を乱すのを恐れるかのように、葵が慎重に口を開いた。

「そんなに…、慧に危険はないっすよね? だって、俺たちで見張ってるんでしょ?」

それを聞いた笈川が、ふんと鼻先で嗤った。

「――ビビるくらいなら、足を洗うんだな。この世界で、命を張るのがイヤじゃ、話にならない」

笈川の突き放すようなセリフは、慧だけでなく、その場の他の男たちをも凍らせた。葛西たちの表情も微かに強張る。

命を張れないのであれば、橘の傍にいる資格はない――

試されているのだろうか――慧は口の中が乾いているのを感じた。

橘の傍にいる資格が、自分にあるのかどうか――

「…あいつがもう一度、俺に接触してくるかどうか分からへんけど…。少しでも可能性があるなら…やらせてください」

「慧…」
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