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Killer Street

第六章『悪魔の見る夢』4

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ふたりは車で関内の蕎麦屋まで出た。

座敷席に上がりこんで、ざるそばとビールを頼む。

「――待ちの戦略ってのは、どうも性に合わないっすな」

橘のグラスにビールを注ぎながら、牛丸がぼそりと言った。

「そうだな」

橘はふっと薄笑いを浮かべた。

本当にそうだ。まったく性に合わない、と思う。

殺し屋に狙われていることなど、気にもならない。

暴力団組織の長、という立場だけで、常にそういった危険とは隣り合わせだ。

加えて、得てしてこういう世界に転がり込んでくる人種というのは、それまでも平穏な生活などと縁のあることの方が珍しい。

少年の頃から、喧嘩や縄張り争いに明け暮れ、下っ端のチンピラ時代など、上も下も周囲も、喰うか喰われるかの環境の中で、ぼーっと気を抜いていれば、あっという間に喉元に喰いつかれるのが日常だ。

だから、目の前に現れる敵など、むしろ刺激があって面白い、と思えるくらいだが、姿を現さない敵の出方を待つ、というのはストレスだ。

そんな忍耐力があるならゴロツキになんかなっていない。

「――新城さんが、例の先生の方のケツは持ってくれるとさ」

橘は、ビールを飲みながら言うと、牛丸がそば、 、を啜る手を止めて、視線をあげた。

「…今日、呼ばれたのはその話で?」

橘が頷くと、牛丸は口の中のそばをビールで流し込んでから言った。

「新城の叔父貴は器がデカイですよね。つまんねぇノタクリはかまさねぇ」

牛丸の感心の仕方に、橘は吹き出してしまったが、確かに言うとおりでもある。新城は、目端の利くヤクザだが、セコイ利益リツに色気を見せる男ではない。そこが渡世の男たちを惹きつけている所以でもあるのだ。

「心配なんですよ、叔父貴も」

牛丸は、ふと真顔で言った。

それも橘は、分かっていた。

抜け目のないヤクザで、自分の不利益となれば、身内でも切り捨てる冷酷さを併せ持つ一方で、新城は橘に対する好意を隠したりもしなかった。

体を合わせる情人としてだけでなく、同門の弟分としての自分を買ってくれているのは知っている。

「こっちから言い出したんじゃ、分かんねぇけどな」

それでもやはり、橘が仁義をとおしていなければ、新城も甘い顔を見せたりはしないだろう。そういうところでは、甘えを許さないのが新城 彰という男だ。

「そっちのスジから糸がつきゃあいいんですがね」

牛丸はそう言ってから、ちっと舌打ちを漏らした。

「笈川さんに楯突く気なんざ、これっぽっちもねぇですが、慧を囮にしたままってのは寝覚めが悪くて…」

そう漏らしてから、牛丸は顔を歪めて苦笑いのような表情を作ったが、元々のご面相が凶悪なせいで不動明王の顔真似のようにしか見えない。

「俺が甘いんでしょうけどね」

「仕方ねぇな、ヤクザに関わってちゃ、そういうこともある」

橘はそう言って、またビールを飲んだ。

そうだ――ヤクザな自分に関わって生きるとは、そういうことに他ならない。

外道の男の傍にいれば、その命を利用されても文句は言えない――

自分はそういう世界に、慧を引き摺り込んだのだから――
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