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Killer Street

第六章『悪魔の見る夢』9

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橘 裕貴を狙う殺し屋になんの動きも見られず、笈川にとって苛立つ日々が続いていた。唯一、接触の可能性のある慧に、囮として動き回らせていても、なんの手掛かりもない。

命を狙われている当人である橘の機嫌もすこぶるよろしくない。

しかし、橘が不機嫌にしている原因は、殺し屋に命を狙われているということよりも、慧を囮にした笈川の作戦が気に入らないだけだということを、笈川は知っていた。

他の情人イロには向けない執着を、橘が慧にだけ向けていることは分かっている。

ヤクザに弱みは命取りだ。

しかし、今さら言っても仕方がない、と笈川は半ば諦めてもいた。

橘は、極道者としては一流の才能があるが、一方で、子どものように自分の欲望を抑制できない男であることも、笈川は承知していた。

橘が、欲しいと思えば、その気持ちを止めることなど誰にもできない――ある意味、その欲望の激しさこそが、橘を一流のヤクザにしているとも言えるのだ。力づくでも欲しいものを奪うその強さ――

慧への執着は厄介ではあるが、少し気を配って安全を守る人間がひとり増えたと思えばなんでもない。

他の親分衆にだって、女房、子どもがいる者はいるのだし、それも若頭の力量だと思っている。

慧の存在が、橘 裕貴を男として気弱にしない限り、許容できる厄介事だ。

しかし、笈川が橘の苛立ちを理解していることと、それが橘組組員に波及することは別問題だ。

笈川の焦れた思いと、橘の苛立ちは組員にも拡がり、組事務所に詰めている舎弟の間の空気に尖りが見られ始めている。

そのピリピリした空気を裂いて、携帯電話の音が鳴った。

自分ではない、と笈川が顔をあげると、橘がソファテーブルに放り出してあった携帯に手を伸ばした。

「はい」

橘は、咥え煙草のまま電話に出た。

橘の電話に直接、連絡を入れる者は限られている――情人か、音羽会の親分衆か、懇意にしているマル暴のオデコか――

「――どうもすみません…」

笑い混じりに橘がそう言った。こんな話し方をする相手は、親分衆の誰かに違いない。

しばらく電話に向かって話をしていた橘は、電話を切ってから、立ち上がった。

「一臣、家に帰るぞ――慧、来い」

そう言うと、橘は笈川の返事も、慧の返事も待たずに事務所のドアに向かった。

笈川は、思わず慧と顔を見合わせてから、橘の後を追いかけた。

「――いきなり家に帰るってなんなんだ」

牛丸の運転する車のリアシートに座った笈川は、早速、隣で煙草に火を点けた橘を横目で睨みつけた。

「事務所でも良かったんだけどな」

煙を吐き出しながら橘は言った。

「新城の兄貴から連絡があったぜ」

さっきの電話はやっぱり音羽会の親分衆のひとりである新城 彰からだったようだ。

「例の先生、 、に探りを入れてくれたらしい――ま、あの人のやり方でな」

そう言うと、橘は人の悪い笑みを浮かべた。

ヤクザの探りだ――市議会議員も小便をちびったぐらいで済んだなら御の字だろう――そう思いながら、笈川は続きを待った。

「――先生は吐かなかったらしいがな――面白ぇことが分かったぜ」

「面白いこと?」

「柴田の叔父貴が、例の殺し屋のことを知ってたらしい」

柴田の叔父貴――新城組の若頭の柴田だ。笈川も、組の会合や、ツキヨリの集まりで何度も顔を合わせたことのあるヤクザ者で、少なからず恩もある兄貴分だった。

「柴田さんが?」

「ああ。これは慧の手柄だな」

唐突に名前が出てきて驚いたのか、助手席に座っていた慧が振り返った。

「あの殺し屋野郎、慧に名乗っただろ? 斉藤だっけ?」

慧が頷いたのを確認して、橘はにやりと笑った。

「あの野郎、偽名も使わねぇで、慧の前にツラ晒しやがったようだぜ」

橘はそう言うと、灰皿に煙草を捩じ込んだ。

「斉藤ってのは殺し屋のまんま、 、 、通り名だ。その斉藤って殺し屋の情報ネタを、柴田さんが持ってたんだよ」
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