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Killer Street

第六章『悪魔の見る夢』10

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**********

「――柴田さんが?」

橘がそう問うと、電話の向こうで新城の笑い声が聞こえた。

――『ああ――。柴田に言わせると、その斉藤って殺し屋はそっちの世界じゃ、かなり有名人らしいぜ』

新城は面白がるような調子で言った。

――『斉藤って通り名以外は正体不明だ。おまえさんたちも苦労してるようだが、そいつの顔は誰も知らなねぇ――居所も分からねぇ――ただ、殺し屋を探してるってネタが業界、 、に回ると、そいつから接触してくるらしいな』

電話の向こうでカチリとライターを点ける音がした。

――『仕事は迅速確実――なかなか仕事熱心な男らしいぞ』

再び、くくっと喉の奥で笑う音がする。

「――笑い事じゃないですよ」

橘が拗ねた声を出すと、新城が弾けたように笑った。

――『命を狙われてるおまえにとっちゃ、ヤクネタだったな』

それから新城は、不意に声を低くした。

――『おまえのとこの坊やに気をつけろ』

「…どういう意味ですか?」

――『斉藤ってのは、どうやら並みの殺し屋じゃねぇ。仕留める確率は常に百パーセントって男だ――今まで、失敗はねぇとよ』

橘が無言のままでいると、新城は続けて言った。

――『おまえの大事な坊や――囮だなんてウロつかせてたら、簡単に始末されるぞ』

新城はそう言うと、橘の返事を待たずに電話を切った。

*********

「――柴田の叔父貴は顔が広いな…」

笈川はそれだけ言った。

新城は、肝の据わった極道者だ。大抵のことに動じたりしない。その男が、わざわざ橘に忠告の電話を掛けてくるくらいだから、斉藤という殺し屋がどれだけ危険か良く分かるというものだ。

その危険人物の前に、慧をエサとして吊るした自分への橘の怒りも知れる。

「秋光を呼べ」

なんの脈絡もなく、唐突に橘が言った。

「秋光?」

秋光あきみつ 健太郎けんたろう――橘が贔屓にしている整体師だ。

なぜ、秋光を?という疑問が過ぎったが、笈川はなにも聞き返さずに、スーツの内ポケットにしまった携帯電話に手を伸ばした。

橘の自宅の地下駐車場に車を乗り入れ、そのままペントハウス専用のエレベーターに乗り込んだ。

笈川は、伊達や酔狂で、高級マンションのペントハウスに橘を住まわせているわけではない。駐車場には専用電子キーがなければ入れないし、ペントハウス直通エレベーターも、同様のキーが必要だ。厳重なセキュリティは、敵の多いこの男を守ることになる。

エレベーターの中で、男たちは無言のままだった。

音羽会直参の新城に、危険と言わしめる男がつけ狙っている、という事実がそれぞれに重くのしかかっているに違いない。

部屋に戻っても、橘は黙ったまま煙草をふかしており、慧も所在無げに部屋の隅に置かれた椅子に座っていた。

牛丸と顔を突き合せるようにしてダイニングテーブルに座った笈川は、小さく溜息を吐いて腕時計にちらりと視線を走らせた。

その時、玄関チャイムの呼び出し音が鳴った。慧がインターホンに応答する。

「今、開けます」

小さい声でそれだけ言うと、慧はマンションの正面玄関の解錠ボタン押した。

五分もしないうちに、今度は玄関のインターホンが鳴った。玄関に出ようとした慧を制して、牛丸が立ち上がった。

すぐに笈川に電話で呼び出された、整体師の秋光 健太郎を従えた牛丸が、リビングに戻ってきた。

「どうも…」

いつものように丁寧に頭を下げてから、その空気の重苦しさに気づいたのか、秋光はきょろりと部屋を見渡した。

「あの…、なにか…?」

施術のために呼ばれたわけではないことを察したのだろう。秋光は様子を窺うように口を開いた。

しかし、笈川も牛丸も、橘が秋光を呼びつけた理由など知る由もない。ふたりは揃って、いつものようにソファで煙をあげている橘を見た。

「待ってたぜ、秋光」

橘は視線をあげてにやりと笑った。

「秋光――、おまえ、『斉藤』を知ってんだろ?」

なんの前置きもなく橘は言った。途端に、秋光の顔色が変わる。

「――どうして…」

「俺は、もともと新城の兄貴の紹介だったって忘れたわけじゃねぇだろ?」

橘の言葉で、笈川も思い出した。

確かに、秋光 健太郎は、新城の紹介で橘が施術を受けるようになった整体師だった。

贔屓にしてやってくれ、とその時、新城は言った。
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