スポンサー広告

スポンサーサイト

 ←第六章『悪魔の見る夢』12 →第七章『飢えた体と愛の疵』2
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。



もくじ  3kaku_s_L.png ごあいさつ
もくじ  3kaku_s_L.png Morning Moon
もくじ  3kaku_s_L.png TOXIC
もくじ  3kaku_s_L.png Crescent Moon
もくじ  3kaku_s_L.png BROTHER
もくじ  3kaku_s_L.png DIRTY SITUATION
もくじ  3kaku_s_L.png New Moon
もくじ  3kaku_s_L.png Killer Street
【第六章『悪魔の見る夢』12】へ  【第七章『飢えた体と愛の疵』2】へ
  • TB(-)|
  • CO(-) 
  • Edit

Killer Street

第七章『飢えた体と愛の疵』1

 ←第六章『悪魔の見る夢』12 →第七章『飢えた体と愛の疵』2


組事務所にやってきた秋光あきみつ 健太郎けんたろうとともに、けいは、サラスヴァティに向かった。あおいも一緒だ。

これまで慧の警護をしていた葵は、突如舞い込んだ秋光の存在に、いい顔を見せなかった。見かけは少女のようでも、葵もおとこを売る稼業であるから、自分以外の護衛がついたことで、侮られたと感じたのかもしれない。

慧もなんだか落ち着かなかった。

橘を守れるなら――と、囮の役目を買っては出たが、あれから一向に殺し屋は慧の前に姿を現さない。

元同業者ならば、葵たちが見過ごすかもしれない些細ななにかに気づけるかもしれない、とたちばなが秋光を慧の護衛に引っ張り込んでからから数日が経つが、周囲にはなんの変化もなかった。

橘を守りたい、と勢い込んではみたものの、現実の自分は、大事な人を守るどころか、逆に多くの人間に守られる立場になっている。いくらまだ堅気気質が抜けないとはいえ、自分の守りが厚くなれば、その分、橘の守りが薄くなることぐらいは、慧にだって分かる。

焦っても仕方がないと自分に言い聞かせて見ても、殺し屋の現れない今がもどかしい。

もしかしたら、自分に近づいてきたのは、慧に接触してくると思わせることで、真のターゲットである橘を手薄にするためではないか、とすら思えてしまう。

橘を守るどころか、やっぱり自分には足を引っ張ることしかできない――

もういっそ、早く殺し屋が自分の命を狙いに来てくれないだろうか――

そうすれば――こんな自分でも、橘の役に立つことができるかもしれないのに――

しかし、そんな願いですら、成就すれば、それは自分の護衛についている秋光と葵を危険に晒す結果にもなる。

つくづく自分が橘組にとって――橘にとって――どれだけ迷惑な存在かと思い知らされる。

堅気のサラリーマン時代でも有能だなどと自惚れたことはないが、これほど自分が無力に感じたことはなかった。

サラスヴァティのオフィスの隅に置かれているコピー機の前で、慧は小さく溜息を吐いた。

ぼんやりとそんなことを考えていたせいだろう。慧の手から、プリントアウトした書類が滑り落ち、それがバラバラと床に散った。

「…あっ」

慌てて床に散乱した紙を拾おうと屈みかけた慧の手元に、素早く拾いあげたそれが差し出された。

「――どうぞ」

顔をあげると、秋光が穏やかに微笑みかけた。

橘に、半ば無理矢理、護衛に引っ張り込まれた秋光 健太郎は、この数日間、本業を返上して慧の側についていてくれた。

朝(と、いってもヤクザの朝だから、昼に近い時間帯ではあるけれど)は笈川と同じくらいに橘のマンションを訪れ、葵とともに慧が行く先々についてくる。

橘との関係、 、を、漏れ聞いてしまった慧にとって、その秋光が身近に存在することに居心地の悪さを感じないわけではなかった。

秋光の顔を見れば、どうしたってあの時のことを思い出さずにはいられない。

そして――自分自身に深く隠されていた歪んだ欲望のことも――

慧は、拾ってくれた当人の顔をはっきりと見ることができないまま、差し出された紙の束に手を伸ばした。

「あ、すみません」

口の中でもごもごと返答してから、先ほどまで作業していた机に戻ろうとすると、再び、秋光が言った。

「元気がないみたいですね」

「…そんなことないです」

発した声は頼りなく、まるで社交辞令にしか聞こえない。嘘もこれほど下手だとは、我ながら嫌になる。

慧の前に立っていた秋光が、小さく笑った。

「不安ですか? …狙われていることが」

慧はかぶりを振った。

自分の塞いだ気持ちは、自身の身の危険ばかりではない。
関連記事
スポンサーサイト



もくじ  3kaku_s_L.png ごあいさつ
もくじ  3kaku_s_L.png Morning Moon
もくじ  3kaku_s_L.png TOXIC
もくじ  3kaku_s_L.png Crescent Moon
もくじ  3kaku_s_L.png BROTHER
もくじ  3kaku_s_L.png DIRTY SITUATION
もくじ  3kaku_s_L.png New Moon
もくじ  3kaku_s_L.png Killer Street
【第六章『悪魔の見る夢』12】へ  【第七章『飢えた体と愛の疵』2】へ

~ Comment ~

管理者のみ表示。 | 非公開コメン卜投稿可能です。
  • 【第六章『悪魔の見る夢』12】へ
  • 【第七章『飢えた体と愛の疵』2】へ
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。