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Killer Street

第七章『飢えた体と愛の疵』2

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少しも不安ではないと言ったら嘘になるが、それでもそんなことは、橘の身に迫っている危険に対する不安に比べたら、たいした問題ではなかった。

その上、橘の身が危険に晒されているというのに、自分はつまらない嫉妬で、協力者である秋光の顔を見ることすらできない――自分の不甲斐なさと情けなさに、我ながら嫌になる。

「そうやないんですけど…」

目を逸らしたまま、慧は言い訳がましく呟いた。

「俺なんかより、橘の方が危いんやないかと思って…。秋光さんは、本当はあいつの側にいた方がええんちゃいますか」

嫌らしい言い訳だ。

本音は、橘の愛人である秋光と一緒にいたくないだけのくせに――

慧の愚痴めいた言葉を聞いて、秋光は少し首を傾げるようにした。

「若頭の笈川おいかわさんも、斉藤があなたに接触する確率の方が高いと考えています。組長の橘さんもそれに異論はない…――ふたりの判断が信用できませんか?」

慧も分かってはいた。

橘も笈川も、こういう物騒な出来事には慣れている。暗黒街の人間の行動にも、熟知しているに決まっている。だから、ふたりがそう思うのなら、きっと斉藤は、橘を狙うより前に、慧に近づいてくる可能性が高いのだろう。

それだって、橘組の突破口が慧だと思われているからに他ならないのだ――一番、守りの弱い自分が、橘の、橘組の、弱点になっているのは明らかだ。

つまりそういうことだ。

橘が関係している愛人と顔をつきあわせていたくないなどと、つまらないことを悩む資格なんてない。

ことは橘の命なのだし、そして慧には――なにもできない――

様々な自己嫌悪を振り切るようにふっと息を吐いて、慧はぎこちなく笑顔を作った。

「――秋光さんの力まで借りて、迷惑をかけているのが、なんかたまらんくて…。すみません」

しかし、秋光は軽く肩を竦めた。

「俺は、音羽会おとわかいの親分さんたちには恩がありますからね。それは橘さんも同じです。役に立てるなら、迷惑なんてことはないですよ」

秋光はそう言うと、慧の手から、ひょいと書類を取り上げた。

「慧さんって…橘さんの――恋人なんでしょ?」

「えっ!?」

自身が橘の愛人のひとりである秋光に、面と向かってその関係を問われて、慧は動揺した。

「こ、こ、こ、こ、恋…人とか…っ、そんなんとちゃいます…っ」

恋人ではない。橘にとっては慧なんて、自分の好きなときに欲求を満たせる便利な道具ぐらいにしか思われていない。

せいぜい愛人――秋光だって、橘の愛人のひとりとして、その辺りの内情を知っているからこそ、恋人か、という言葉の間に妙な間があいたに違いない。

しかし、秋光はそんな慧を見て、にっこりと笑った。

「――でも…、組員じゃあないでしょう。仕事は後回しにしましょうよ。こんなところに籠っていると気が滅入りますし、ちょっと外へ行きませんか?」

「でも…」

確かに慧なんかに任せられている仕事は、急ぎのものなどないし、今、コピーを取っていた書類だって、どうしても今日でなければならないということはない。しかし、ただでさえ役に立たない自分が、与えてもらえた仕事まですっぽかすというのは、気が引ける。

しかし、秋光は書類をデスクに置くと、慧の手を引いた。

「慧さん、せっかく囮なんだし、表を出歩いた方がいいと思いますよ」
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