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Killer Street

第七章『飢えた体と愛の疵』5

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もしも、あの夜、斉藤の弾丸が橘を捉えていたら――そう思うだけで、心臓を鷲掴みにされるような戦慄を覚える。

もしも――もしも――そうしたら――

あの夜から、もう橘の声を聞くことも、あの皮肉な笑みを見ることも、なくなっていた――あの体の熱も――

橘との別離の想像が慧を怯えさせる。

そういえば、一度だけ、橘が警察に拘束されたことがあった。

静岡水葉会しずおかすいようかい構成員だった砂川すなかわ つよし――かつての橘の恋人、香織の兄の殺人容疑だった。

大掛かりな暴力団の抗争事件でもなかったそれは、結局、チンピラの事故死という形で幕を閉じてしまったが、あの時、砂川の舎弟の見当違いな警察への密告で、橘はほんの三日ほど、警察に留め置かれていた。

たった、三日の別離――

それは本当に、ただそれだけのことだった。それなのに――

帰ってきた橘を抱いたあのときの怖いほどの欲求を、慧はまざまざと思い出していた。

求めても、求めても、尽きないほどの狂暴な衝動――

自分の中に、あんな激情が眠っているなんて、知らなかった。

もしも橘が――自分の元から去っていってしまったら――

橘 裕貴と別離れることになったら――気が狂ってしまうかも――

どこにも行かせない――

不意に湧き上がる唐突な独占欲――

違う――あれは――

あの時は確かに、橘は慧の傍にいなかった。でも、今回のそれはあれとは違う、 、 、 、 、 、 、 、 、――今、橘と慧が直面しているのは、橘が殺されてしまうかもしれない、ということだ――橘の存在が、もうこの世界のどこにもいなくなってしまうかもしれない――ということ――ただ、橘が自分のもとからいなくなる、という話ではない――けれど――

――怖ぇな…人の寝顔じっと見てんじゃねぇ…

三日間の勾留から帰ってきた橘を狂ったように抱いた。そして、短い眠りのあと、その寝顔を見つめていた慧に、橘が言った。

――…俺のこと絞め殺しそうな顔してたぜ

あのとき慧は、その寝顔を見つめながら、橘との別離を想像してはいなかったか――?

――離れていくくらいなら、もう殺すしかない…?

そんな想いが脳裏を過ぎる。

違う…――これは――これは俺の言葉じゃ…――そうだ――これは殺し屋、斉藤の――

――もう殺すしかないじゃないですか…

それは、ここで出会った斉藤が、慧に囁いた言葉だ。

自分のものにならないのならば、殺すしかない――と、まるで慧の気持ちを弄ぶような斉藤の作り話――

慧は絡みつくような斉藤の戯言を振り払おうと、かぶりを振った。

惑わされるな――あれは斉藤が、慧をからかっただけのことだ。

ターゲットの橘の周囲を調べていた過程で、斉藤はきっと慧の立場を知ったに違いない。そしてその苦悩を想像したのだろう。

だから、あんな作り話で慧を惑わせようとした。

莫迦莫迦しい――愛する者が自分だけのものにならないからといって、殺してしまってはなんの意味もない。

それではやっぱり橘は、慧の傍にいてくれることにならない――慧がこの手で、橘の存在を消し去ってしまうのだから――

こんなのは――呆れ果てた悪魔の論理だ。

そう自分に言い聞かせながら、慧は自分の手がじっとりと汗ばんでいることに気づいた。

動揺するな――アホ――

あんな殺し屋の戯言に動揺させられるなんて、莫迦げている――

そんな――そんなことを――考えているわけじゃない――

――…俺のこと絞め殺しそうな顔してたぜ

違う――ちゃうねん――俺は――

「…――違――…う」

慧は思わず声に出した。声に出して、はっきりと――そうでなければ、心が別の想いに侵食されてしまいそうだ――

「慧さん?」

奇妙な独り言を不審に思ったのだろう。秋光に名前を呼ばれて、慧は我に返った。

秋光と葵が、訝しげにこちらを見ている。

「――あ…、なんでも…――」

慧は、首を振った。

今の今まで、慧の心を占めていた妄想を追い払う。

そう、妄想――だ――
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