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Killer Street

第七章『飢えた体と愛の疵』6

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舎弟の葵と、半ば強引に引き摺り込まれた秋光を伴って慧が事務所を出て行ってからしばらく煙草をふかしてぼんやりしていた橘は、短くなった吸い殻を灰皿に押しつけて、立ち上がった。

「出掛けるのか?」

書類を検めていた笈川が顔をあげた。

事務所ここでタマってたって殺し屋は来ねぇだろ? あいつだけを的に銃弾タマの前に放っぽり出したんじゃ、寝覚め悪ぃからな」

そう言って、橘がソファテーブルに放り出してあった煙草を掴んでジーンズのポケットに捩じ込んだその時、組事務所のドアが開いて、葛西が入って来た。

葛西は、橘に向かって軽く頭を下げてから、足早に笈川に近づいた。

「笈川さん、ちょっと」

葛西は部屋の隅に連れ出した笈川に、一言、二言、耳打ちをした。

「裏は?」

「今、上原が」

笈川の短い問いかけに、葛西も言葉少なに答える。

橘は、ふたりの様子をそのまま見ていた。

「裕貴」

笈川が顔をあげ、橘を呼ぶ。

尻尾が出たぞ、 、 、 、 、 、

葛西の来訪で、なにかを予期していたのであろう橘が、にやりと笑った。

「詳しく話せよ、葛西」

葛西は、眉をあげた。

「どうやら問題は、例の先生、 、の方じゃなく――もう片方のエダだったみたいですよ、 、 、 、 、 、 、 、 、 、 、 、 、 、 、 、

「もう片方?」

「みなとみらい共同開発の――相棒の方です」

相棒――みなとみらいの観光開発は、横浜市肝いりの事業ではあるが、当然、開発事業は市だけでできることではない。そこには大手の開発業者、建設業者など、多くの私企業が関わっている。中でも、四友よつとも都市開発は、デベロッパーとして、市の開発業務の多くを担っていた。開発用地の買収にも、四友開発の不動産部門が大きな働きをしていたことは、笈川も知っていた。

「四友――か?」

葛西は返事の代わりに、スーツの内ポケットから写真を取り出してみせた。

「こいつは…――」

「笈川さんは知ってるでしょう? 高遠たかとお 孝次郎こうじろう――四友の都市開発事業本部長です」

写真には、紺色のスーツを着た、まだ若そうな男が写っていた。近影だったが、視線がこちらを向いていない。明らかに盗撮と分かるものだった。

「随分、若ぇな」

いつの間にか、笈川の隣にいた橘が写真を覗き込んで、鼻を鳴らした。

「こう見えて三十五歳ですよ。あんたよりゃ歳上だ」

葛西がにやにやと笑った。

「へっ。それにしたって天下の四友の都市開発事業本部長だろ? 若すぎんじゃねぇか?」

「四友グループの会長の孫だ」

橘の疑問に、笈川が答えた。

都市開発事業本部といえば、四友都市開発の重要部署だ。橘の言うとおり、その本部長に三十五歳の若造は、通常ならば有り得ない。しかし、高遠 孝次郎は、四友グループ現会長の孫息子に当たる。名前のとおりならば次男だから、将来の会長職は難しくとも、その七光りは、重要部署の役職を射止めるには十分な光に違いない。

「さすがに笈川さんは知ってますね」

まだにやにやと笑っている葛西に、笈川はちらりと視線を向けた。

ヤクザとはおとこを売る稼業だ、などとうそぶいてはみても、昔と違って、賭博や用心棒だけで食っていける時代ではない。地域の開発事業や、土地の買収は、今や暴力団の大きな稼ぎシノギだ。ただでさえ淘汰された裏社会で生き残っていくためには、こうした企業の動向も押さえておかなければならない。

そういう意味で、強化された暴対法は、小物のヤクザやゴロツキを排除することはできても、社会の奥底に喰らいついている大悪党には機能していない、ということだろう。

横浜市で行われる大規模開発のほとんどに関わっている四友開発は、笈川にとって馴染みの顔だった。

「…ふん、例の開発用地の四友側の大将か」

橘は面白くもないという表情のまま、鼻を鳴らした。
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