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Killer Street

第七章『飢えた体と愛の疵』8

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「どういう意味だ?」

「菊水一家傘下のどこの田舎ヤクザが噛んでんのかは知らねぇが、そこまでバカじゃねぇだろ。橘組ウチがいくら最末端のチンケな組だろうが、狙ってんのは仮にも組長オレタマだぜ? ことがバレりゃ、ただじゃ済まねぇってことぐらい分かんだろうさ。おまけに四友の高遠を巻き込んでやがる――高遠に直に繋がってんのは橘組ウチじゃねぇんだぞ」

橘の言うとおり、そもそもこの都市開発のネタは、橘組に直接、持ち込まれたネタではなかった。横浜市議会議員と四友の高遠が持ち込んだ先は――

「――新城組」

笈川が呟くように言うと、橘がにやりと笑った。

「そういうこった。橘組ウチは末端かもしれねぇが、新城の兄貴は沖賀の親爺の直参だぜ? そこの顔を潰されて、新城さんも親爺も黙ってるかよ」

確かにそのとおりだ。そんな遠回りなことをして、末端の橘組を潰したところで、山梨菊水一家にはなんの利益もない。むしろ音羽会筆頭組織の新城組を引っ張り出してしまう、最悪の結果となりかねない。

「――じゃあ、山梨は無関係だと思うのか?」

「無関係ってこたぁねぇだろ」

橘はひょいと肩を竦めた。

「一臣、裏の超一流に頼むにゃ、それなりのエダが必要だって言ったのはてめぇだろ?」

橘の命を狙う殺し屋、斉藤は裏の世界では有名な一流どころだった。まっさらな堅気の人間が、そんなプロに繋ぎをつけられるわけはない。

「多分、裏の世界に繋いだのが、菊水一家なんだろうさ」

甲府にぶどう園を買い込んだことは偶然でも、この忙しい最中に、足繁く通う必要がないだろう、と橘は鼻に皺を寄せた。

「菊水一家にしてみりゃ、裏に繋いだだけだからな。ターゲットが俺だなんて知らなかった、でいいわけさ」

「知らないわけないだろう」

笈川が眉を顰めると、橘が当たり前だ、とドスの効いた声をあげた。

「てめぇ、ナメてんのかよ。てめぇが繋いだ仕事の中身を知らねぇわけねぇだろうが」

「でも、表向きは知りませんでした――ならマチガイは起きませんからね」

葛西が、涼しい顔で言った。

「おう。菊水一家も、てめぇとどっこいの腹黒さだぜ」

橘はぎらりと瞳を光らせた。

「――しかし、なんだって菊水一家も橘組ウチを狙い撃ちなんて――ウチにモサつけたってなんにもならんでしょう」

今回の事件は、表立った組同士の抗争ではないから、たとえ橘組が潰れたとしても、その縄張りシマが菊水一家に流れるわけではない。

現状の力関係ならば、もしも橘組が倒れたとしても、その縄張りは新城組に吸収されるか、新城組若頭の柴田が組を持って引き継ぐことになるか――しかし、どちらにしても菊水一家の利益りつにはならない。

縄張りシマ争いにもならないこんなモサをなぜ――そこまで考えて、笈川は思い当たった。

「藤波組か――」

「遅ぇぞ、一臣」

そう言った橘がにやりと嗤った。

菊水一家藤波組――以前、音羽会傘下の寺島組組長、寺島 竜也は同門の橘組との内輪揉めを装おって、大掛かりな抗争事件を仕組み、そこに公権力を引っ張り込むことで音羽会そのものを潰そうと計画した。絵図師は、寺島 竜也自身ではなく、橘に因縁のあった内藤 啓介だったが、その計画は、寺島、内藤、両者の死によって、橘に阻止された。

その絵図の中で、寺島が手を組んでいたのが、山梨菊水一家一門藤波組だった。

藤波組にとっては、仇敵の音羽会壊滅という一大絵図が、橘のような若輩の末端組織に潰されたことになる。

藤波組ならば、具体的なリツがあろうとなかろうと、橘組に落とし前をつけようとする理由がある。

「…そ…りゃあ、恨まれてるな」

笈川は溜息を吐いた。

「今さらだぜ」

おそらく橘は、菊水一家と聞いた瞬間から藤波組に思い至っていたのだろう、ふんと鼻を鳴らした。

「確かに今さらだな…」

経緯を考えれば、恨まれていない筈はないのだが、なんといっても橘も笈川も渡世が長い。恨みつらみは星の数だ――そのひとつひとつをいちいち覚えてはいられない。

「ったく、因果な商売だな」

「それも今さらでしょ、笈川さん」

思わず愚痴が口をついて出た笈川を茶化すように葛西が言った。

「執念深いのもお互い様だぜ」

橘が唇の端だけで嗤う。

「裏取ってこい、葛西。的は藤波組、一本だ。モタモタしやがるんじゃねぇぞ」

葛西は、はい、と一礼すると、足早に事務所を後にした。
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