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Killer Street

第七章『飢えた体と愛の疵』9

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「――絵図は藤波組か」

閉まるドアを見ながら、笈川は独り言のように言った。

「四友のイケメンお坊ちゃんはいいように利用されたな。どうせ、俺を野放しにしておいちゃ、いずれ開発用地地上げの件をバラされるとでも吹き込まれたんだろ」

橘は、ポケットから取り出した煙草に火を点けながら言った。

「なるほど。そうすりゃ邪魔者を片付ける金も高遠の財布から出るしな――」

「まったく、同業ながらヤクザってのは汚ねぇ絵図は得意だよなー」

「ヤクザの手口としちゃ、外道だがな」

笈川は腕を組んだ。

橘を狙ったのは、寺島組の音羽会壊滅作戦の落とし前なのだろうが、本来なら自分たちが前面に出てこその落とし前だ。どこかで利益リツが出るのなら、姿を現さない絵図も描くだろうが、メンツのかかったヤクザの落とし前としたら、この絵図は外道だ。

「――リツは出るんだろ」

まるで笈川の思考を読んだかのように、煙を吐き出しながら橘が言った。

「ことは殺しだ。カタギが関わるにゃ、ちょっと厄介なネタだぜ。これで四友の高遠は藤波の紐付きだ。骨の髄までしゃぶられるぜ」

もしも、橘殺害が成功すれば、依頼者の高遠 孝次郎は実行犯ではなくとも、共謀正犯だから、殺人罪だ。それをバラすぞ、と脅されれば、高遠には逃げ道はなくなる――どんな無理難題でも、藤波の言うことを聞くしかない。藤波も莫迦ではないから、当然、決定的な証拠を握っているだろう。

「もしかしたら、そっちがホントの目的かもな――俺のタマは余禄じゃねぇか?」

「余禄で親爺のタマ取られるんじゃ、かなわんな」

笈川は呆れたように溜息を吐いた。

組長の命を狙われている、ということだけでも厄介な問題であることには変わりはない。その上、これが、藤波組に繋がれば、いずれけじめをつけなければならなくなる。

山梨菊水一家は、敵に回したい相手ではない。

しかし、依頼主がはっきりすれば、そっちに働きかけることで、この殺しの依頼を取り下げさせることができるかもしれない。

そうなれば橘の危険はなくなる。

慧の危険も、か――

笈川は小さく溜息を吐いた。

殺し屋斉藤は、二度も慧の前に姿を現し、接触している。

目的は分からない。

慧と交わした言葉は、他愛もない作り話だった。

いくら慧が橘の情人だとしても、あんな会話でどんな目的も果たせたはずはない、と笈川は考えていた。

目的を果たしていないのであれば、斉藤が再び慧に接触してくる可能性は高いだろう。そう思ったからこそ、危険を承知で慧を囮にすることを思いついたのだ。

慧は、その危険な役目を買って出た。

それは、慧の橘への愛情からに他ならない。

慧の純粋な想いを利用している、という自覚はあった。

それでも――橘の命を狙う殺し屋斉藤を仕留めるためならば、誰を危険に晒そうとも構わない、と笈川は考えていた。

慧の純粋さを利用していることに、柄にもなく心が痛まないことはないが、代償が橘の命となれば話は別だ。

親の命を盾にしてでも、裕貴は守る――

「おい」

不意に橘に腕を掴まれた。

「ちょっと来いよ」

橘は、そう言うと、笈川に顎をしゃくって見せて、事務所の奥の組長室のドアを開けた。

笈川は、橘に続いて、組長室へと入った。

「――なんだ?」

「外をうろついてやろうかと思ったけど、やめるわ」

内密な話でもあるのか、と笈川が尋ねると、橘はぺろりと舌を出した。

「この件もどうやら目鼻がつきそうじゃねぇか。なら俺がわざわざ身を晒してやるこたぁねぇよな」

そう言って、橘は組長室の奥に設えた事務机の後ろに回り込む。

組長室、とはいっても、若い衆と過ごすのを好む橘自身は滅多にこの部屋を使用しない。

金庫が置いてあり、余計な邪魔が入らないこの部屋を使うのは、もっぱら笈川の方だった。

「好きにしろ。どうせおまえは俺がなにを言っても、やりたいようにやるんだから」

笈川が腕を組んで、ふんと鼻をならすと、橘がにやりと笑った。

「――鍵、掛けろよ、一臣」

組長室の鍵を掛けろ――それは合図のようなものだった。

組長である橘と若頭の笈川が、組長室にいるときに、そこに入ってくる組員などまずいない。

組織のツートップの密談を、邪魔するにはそれなりの理由がいる。

緊急事態でも起きれば別だが――

つまり、組長室に鍵を掛けろ、というのは、どんな緊急事態でも誰にも邪魔されたくないということ――橘は、笈川に自分を抱け、と言っているのだ。
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