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「New Moon」
大阪 Baby Blues
第二章『暗くなるまで待って』 1
次の日、
亮は少年グループでは最年長のリーダー格で、百九十センチメートル近い大男だが、痩せているのでひょろ長いといった印象だった。
内藤の前では口を謹んでいるようだが、お調子者の手塚はすぐに裕貴にうち解けて、テッちゃんって呼んでやと言いながら、浪速っ子らしく冗談を口にするようになった。
ふたりは裕貴を港近くの観覧車のある公園に連れてきた。緑地の中の遊歩道を抜けて見晴らしのいい広場に出る。
海が常に身近な横浜で生まれ育った裕貴にとっては、親近感を覚える場所だった。
「ここ…いざという時に俺らが集まる場所やから覚えとき」
海に臨んだ背の高い石塔の前で亮が言った。
「いざという時?」
裕貴はそう言いながら辺りを見廻した。海傍の公園といっても周囲には緑が多い。たしかに身を隠すにはいい場所だが、一方で海側に追い詰められれば逃げ場所がないことが、ふと気になった。
――まぁでも実際は、こんなところで大人数に追い詰められることなんかねぇか…
どちらかと言えば市内のここかしこで小競り合いが散発しているという状況だ。
いずれどちらかが負けを認めれば手打ちとなるに違いないのだが、押され気味の横尾方が先代の遺言を背負っているため、引くに引けない状況に過ぎないのだ。
だから大勢でやりあうような可能性はまずない。なにかの襲撃に失敗して逃げ出した時に、誰かが後をつけられればまだしも、ここが緊急集合場所だということを敵側は知らないのだから、少人数なら木立と緑の中に身を隠すことは簡単だ。
「おまえ、こんなとこまで腕貸しに送りこまれるなんて、
笑顔を浮かべて言うテッちゃんこと手塚に、どう返事をしようか迷う。
しかし戦いの只中で、現実に命を危険に晒している亮と手塚に、そんなことは言えなかった。
「いや…、俺は他の兄貴たちのおまけみたいなもんだからよ」
と、言葉を濁した。
昼過ぎから夕方までの一番暑い時間帯に大阪市内を歩き回ってからふたりと別れ、内藤の家に戻った裕貴は全身、汗だくだった。
「おお、おかえり〜…って、おまえ、びちゃびちゃやないかい」
アパートにいた内藤は、汗まみれで戻った裕貴をひとめ見るなり、そう言った。
「もう…暑くて…」
夏は横浜だって暑いが、大阪の暑さは比ではなかった。なんというか空気がもう熱い。
襟足からも汗が滴って、金色の髪の毛が顔にべたべたとまといついてくるのが鬱陶しい。
裕貴はすぐに風呂に飛び込んだ。シャワーで汗を流して出てくると、内藤が裕貴に缶ビールを差し出した。
「ありがとうございます」
裕貴はぺこりと頭をさげて、ビールを受け取った。
こんなところは、内藤は本当に気さくだ。普通、ヤクザの兄貴分というものは舎弟をパシリに使っても、こんな風に気遣ってくれることなどない。
シャワーを浴びた先からまた汗が滲み出てくるようで、裕貴はハーフパンツだけの上半身裸のまま和室に座り込んだ。
「どや、亮たちと仲良うなれたか?」
内藤もビールを片手に卓袱台の前に座った。喫いかけの煙草が灰皿の縁に乗っている。
裕貴はビールを缶から直接、啜りながら頷いた。
「あちこち案内してくれました。なんかずっと歩きっぱなしっだったっすけど」
「大阪は狭いからな。歩きで大抵のところは行かれんで」
内藤は楽しそうに笑った。
「だから、裏道、路地、そういうのんが頭に入っとらんと、いざという時、逃げ切れへんねん。また案内してもらい」
内藤が、まだ濡れたままの裕貴の金髪をひと撫でした。
「なんやおまえ、頭びちゃびちゃやんけ。ちゃんと拭けや」
濡れた手を大袈裟に振ってから、内藤は裕貴が首からぶら下げていたタオルを取り上げて、髪をゴシゴシと拭きだした。
「…ちょ…っ、いいっすよ。自分でやるから…っ」
裕貴は慌てて逃げようとした。こんな風に世話をやかれることには慣れていない。
「ええからおとなしいしとけ。ほら…っ」
哥兄にそう言われて、裕貴は仕方なく黙って下を向いて、内藤のなすがままになった。
身動きをやめた裕貴の頭を内藤はタオルで良く拭いてから、ぽんと頭を叩いた。
「よっしゃ」
目をあげると、頭に被せられたタオルの間から内藤の笑顔が覗きこんでいる。
「あ…、ありがとう…ございます…」
裕貴の礼に、内藤は優しい笑みを向けた。
「腹減ったやろ? 今日はおまえも疲れたやろから、俺がなんか作ったるわ」
内藤はそう言うと立ち上がって狭い台所に向かった。
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