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「New Moon」
大阪 Baby Blues

第三章『小さな恋のメロディ』9

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内藤の話は、もうすぐ大きなマチガイがあるかもしれないから準備をしておけ、というものだった。ドウグの調達を任されているらしい小宮が、細かい打ち合わせをした後、解散になった。

少年たちと別れて内藤と家に戻った裕貴は、そこで昼間、淳子が訪れたことを思い出した。

内藤に伝えそびれていた――

言った方がいいに決まっている。淳子は内藤の女なんだし――

家に戻ると、内藤はいつものように早々に風呂場に消えてしまった。

裕貴は和室に突っ立ったまま、淳子が開けていたタンスを見つめていた。

「どないしてん?」

突然、ぽんと後ろから頭を叩かれて、裕貴は振り返った。

首からタオルを掛けて、上半身裸の内藤が立っていた。

「なんでも…ない…」

そう言うと、内藤はふんと鼻を鳴らして、台所にビールを取りに行った。

俺も風呂に入ってくる、とだけ言って、裕貴は逃げるように浴室に飛び込んだ。

風呂から出た後、和室を除くと、内藤が隣室のタンスの抽斗を開けていた。

「――淳子、来たんか?」

こちらに背を向けたまま、普段の調子で内藤が尋ねた。

「――うん」

裕貴はそう答えると、卓袱台の前に座り込んだ。

先に言えば良かった――

これではまるで裕貴がわざと、 、 、淳子の来訪を内緒にしていたみたいではないか――

そんなつもりはなかったのに――

ちゃんと内藤に伝えるつもりだった。

ただちょっと機を逃しただけで――

内藤はなにも言わずに和室に戻ってきて腰を下ろすと、飲みかけのビールを口に運んだ。

「――またその座り方…」

言われて気がついて、裕貴は慌てて膝から両腕を放した。

「淳子になんか言われたんか?」

裕貴は首を横に振った。

「――ふん…、まぁそやろな、あいつは…」

あいつは――?

どういう意味なんだ。

淳子は内藤の女で、裕貴はただの弟分だから?

内藤と裕貴の関係を淳子は知らないから?

それとも――

「…あんたの浮気になんて慣れてんじゃね?」

軽口を装って言ったつもりが、まるで拗ねている子どものような口調になってしまった。

「あ…」

慌てて口を閉じる。

「浮気?」

内藤がくすりと笑った。それからぽんと裕貴の頭を叩く。

「アホ」

そう言って、内藤は外方を向いた。

「なにがアホなんだよ」

急に苛立った。

内藤がこちらを向いて、薄く笑った。

「おまえはホンマにガキやなぁ」

「なんだよ、ガキって――」

ムキになって言い返した。

「ガキだから? だから俺がイライラしてるっていうのか? ガキだから俺があの人に嫉妬してるって…――」

そこまで言って、裕貴は口を噤んだ。

嫉妬…――?

俺…、あの女に妬いてるのか――?

良く――分からなかった。

だって、淳子は女だし、裕貴は男だ。

淳子は最初から内藤の情人イロだった。

だから嫉妬なんて――バカげている――

「裕貴」

呼ばれて裕貴は顔をあげた。

内藤が優しく微笑んでいる。

「こっち来い」

そう言われて裕貴はぎこちなく内藤の前までにじって行った。

体に腕が回され、抱き寄せられる。力を抜いて、内藤に体を預けた。

内藤は裕貴を抱いたまま、まるで赤ん坊をあやすように体を揺らした。

耳許に唇が寄せられる。

「裕貴、好きやで…」

「啓介さん…」

裕貴もおずおずと内藤の背に腕を回した。
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