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「New Moon」
大阪 Baby Blues

第三章『小さな恋のメロディ』10

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*********

その日、一臣がいつものように沼田組の事務所で仕事をしているところに、内藤が裕貴を伴って訪れた。

「手打ち?」

「ええ。前田さんが間に立ちたいって言わはって…」

内藤の言葉に磯村は渋い顔を見せた。

「前田さんが?」

内藤が頷いた。

「まぁ、ほんでも向こうさんは大分、強気でっせ。条件としてはこっちに相当キツイこと言うてきますやろな」

一臣はお茶を出してから、遠目に立っていた裕貴の側へ行った。

哥兄同志のややこしげな話だからだろう。裕貴は手持ち無沙汰そうに、その辺をきょろきょろ見ていた。

「裕貴」

「よお」

裕貴は挨拶代わりに軽く顎をあげて見せると、声を顰めて一臣に言った。

「なんの話してんだよ?」

裕貴の問いに一臣は首を傾げた。

「手打ち…の話みたいだけど…」

「手打ち? 篠田さん側に手打ちを申し込むっていうのか?」

「いや…、どうも篠田側むこうから手打ちの話が出てるみたいだな」

「篠田さん側から?」

一臣は頷いた。

これは磯村にとっては吉報ではないだろうか、と一臣は思った。

以前から手打ちの準備を進めていたにも関わらず、その相手方の調整役の塚原が殺されてしまってからは磯村たちは八方塞がりだった筈だ。

「前田っていう人が間に立つって――前田…前田さんか…」

「知ってんのか?」

直接の知り合いというわけではない。ただ参謀本部に近いところにいる一臣には、篠田側の組の情報も入ってくる。

前田は篠田側の武闘派組織で、かなり前のめりに篠田の後押しをしている組だった。

そう説明すると、裕貴がけけっと笑った。

「どっちにしても篠田に筋が通らねぇことは間違いねぇからな。拳を振り上げちまったはいいけど、落とし所探してんじゃねぇの?」

一臣が片眉をあげて見ると、裕貴はふんと鼻を鳴らした。

「この跡目争いは最初ハナっから篠田にゃ目はねぇだろうが。先代の正式な遺言があるんだぜ? それも誰が聞いたか分かんねぇような、今際の際の譫言うわごとじゃねぇ。真島親分は死ぬ、うんと前から西の親分連中に跡目の回状チラシ回して、連判状作ってんだ。たとえ力技で篠田が跡目もぎとったって、連判に判を押した親分連中をどうやって納得させんだよ?」

「それもそうだな…」

一臣は半ば上の空で答えた。

「なんだよ、違うって言うのか?」

「いや…」

おそらく状況は裕貴の言ったとおりだろう。筋は最初から横尾の跡目にある。しかし、現実の戦況だけが、理屈に合っていない。

「でも…、横尾方こっちは押されてることに間違いないんだ」

「押されてる?」

一臣は頷いた。

「寝返る組がどんどん出てる――」

「寝返るって…、篠田にか?」

一臣は頷いてから、磯村に聞いた大阪抗争勃発の経緯を裕貴に告げた。

「ふん…、横尾親分も随分血の気の多いの囲ってんじゃんか」

裕貴は鼻で笑った。

「でも血の気は多くても、頭の方への巡りは悪ぃのばっかみてぇだな」

「どういう意味だよ」

一臣が尋ねると、裕貴はばぁか、と言った。

「考えてもみろよ。一見、横尾親分の手下は敵方の大将格獲って手柄立ててるみてぇに見えるけど、全部、親分に逆目に出てんじゃんか」

「逆目…」

「だろうがよ。最初に篠田の若頭補佐だかを殺しロクっちまったおかげで、篠田がケツまくるいい言い訳を与えちまってるしよ」

裕貴はそう言うと、ぺろっと舌を出して肩を竦めた。

「おまけに横尾親分につこうって気だった小林組の若頭がいなくなっちまったせいで、大駒まで篠田に走っちまったじゃんか」

「なるほどな」

裕貴は、ガキで短気で莫迦でスケベな男だが、こういうことには本当に頭が回る。

つくづくこいつは極道稼業には向いているんだな、と一臣は思った。

金勘定は苦手だけど、作戦参謀なら本当は自分なんかよりも裕貴の方が才能はある。

「あ、そうだ…」

それで思い出した。
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