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「New Moon」
大阪 Baby Blues

第三章『小さな恋のメロディ』12

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「裕貴、行こか?」

話が終わったのか、ソファから立ち上がった内藤がこちらに声をあげた。

ソファに座ったままの磯村を残して、内藤はこちらに歩いてきた。

「お? おまえ、渡会組で会った裕貴のツレのインテリくんやん。名前、なんやったっけ?」

一臣に目を止めて、内藤はにやりと笑った。

笈川おいかわです」

一臣は頭を下げて挨拶をした。

「笈川――ね…」

名前を呼ばれて、一臣の背筋にぞわりと悪寒が走った。

磯村が評した内藤の人物像に惑わされているのかもしれない。

「裕貴、携帯あるか?」

内藤が唐突に言った。

「携帯? ある…ありますけど…」

「写真撮ろうや」

内藤は突然、そんなことを言い出した。

「は? なんで写真なんか…」

裕貴も訳が分からないという顔で、内藤を見ている。

一臣も訳が分からない。

「ええやんけ。こっちの兄ちゃんとおまえ、昔からのツレなんやろ? 大阪記念や」

「なに、言ってんの?」

そう言いながらも裕貴はポケットから携帯を取り出した。内藤はそれを裕貴の手から掻っ攫うと、自撮りの要領で、三人をフレームに収める。

「はい、チーズ」

莫迦みたいに大袈裟にはしゃいで写真を撮ると、おお、よぉ撮れてる、男前や、と自画自賛した。

こうして見ると気さくで陽気な哥兄だが、この奇妙な違和感はなんだろう、と一臣は考えていた。

キャバクラの店長みたいだ――

キャバクラの店長は、お客と同性である男が多い。そして彼らの多くは一癖も二癖もある水商売の女たちを束ね、尻を叩き、時には諍いの仲裁をし、お客同士の嫉妬もうまくコントロールして店を切り盛りしている。けっして莫迦には務まらない仕事だ。

しかし彼らはけっして自分たちの利口ぶりを、お客の前でひけらかさない。むしろ道化を演じ、お客を引き立たせる。

ほんの一時期、キャバクラのボーイのアルバイトをしていた一臣は、そういった人間を間近に見ていた。そして、内藤 啓介はまるで彼らのようだ。

道化のフリをして相手を煙に撒く利口者――

だからこのはしゃぎぶりが嘘寒いのだ。

この道化ぶりは最初から、他人を騙すための仮面だから。

「ほんじゃ、行きますか」

散々、冗談を言ってから内藤は一臣に向き直った。

「またな、笈川」

一臣は心の裡を顔に出さず、黙って頭を下げた。

内藤と裕貴が事務所を出て行って、一臣はソファテーブルのお茶を片付けた。飲み残しのグラスを下げてくるとき、事務机に見慣れた携帯がぽつんと置かれているのを見つけた。裕貴の携帯だ。

写真を撮った後、巫山戯ていて、そのまま置いていってしまったのだろう。まだ間に合うだろうか。

一臣はグラスをその場に残すと、携帯を持って事務所を出た。

エレベーターの方に向かおうとして、廊下の曲がり角で足を止めた。

廊下の角を曲がった先に内藤と裕貴の姿が見えた。

ふたりは廊下の隅で身を寄せて、くちづけをしていた。

「…なんだよ、こんなとこで」

裕貴が拗ねたような声を出している。

「イヤなんか?」

「だって、誰かに見られたら…」

「見られたって俺はかまへんけど」

小さな声で話していても、反響しやすい廊下での会話は、一臣にも届いた。

そういう――ことだったのか――

――あいつは男もイケんねんて

磯村はそう言っていた。

それでも裕貴は、それが絶対に嫌だったら、死んでも抵抗しただろう。裕貴が嫌だと思うことを強要することなんてできない。裕貴はそういう男だ。

そしてその裕貴が受け入れているというのなら、それもそういうことだ、 、 、 、 、 、 、――

裕貴は――内藤を受け入れてもいい――受け入れたいと思ったのに違いない。

一臣は、静かに少しだけ事務所の方に戻ると、今度はわざと大きな足音を立てて、廊下の角を曲がった。

「あ、まだいた」

意図的に大きな声を出した。

「一臣」

裕貴が驚いた顔でこちらを見た。

「携帯、忘れてるぞ」

そう言って、手渡すと、ああ悪ぃ、と裕貴はいつもの調子で言った。
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