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「New Moon」
大阪 Baby Blues

最終章『許されざる者』5

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敵対組織の最後の大物、塚原殺しを上に報告に来た者はいなかった。これがもしも横尾方の仕事であるならば、成し遂げた者は嬉々として己が手柄を誇りに来たに違いない。塚原が幹部極秘の手打ちの立役者であることを知る若い衆はいなかったのだから、敵の大物の首を獲ったということは、手柄だと考えるに決まっているからだ。それなのに、なぜかその戦果を報告に来た者はいなかった。

それだけを取ってみても、この殺しはすでに横尾対篠田という単純な跡目抗争の図式を大きく外れる。

腹に一物ある人物がこの殺しの裏にいることは間違いない。

離反が相次ぐ横尾派の親分衆の誰かが、塚原の首を手土産に篠田に寝返る、などということも考えられないだろう。裏の思惑はどうであれ、塚原は表向き、篠田の腹心の舎弟だったのだ。篠田の真意がはっきり分からない以上、下手をすれば、篠田の逆鱗に触れかねない。現時点での寝返りは、理由などなくとも篠田に歓迎されることは分かりきっているのだから、そんな危ない橋を渡る必要など誰もない。

だとすれば、この人物は最初から篠田側にいて、 、 、 、 、 、 、 、 、 、、篠田の意志でこの殺しを実行しているとしか考えられない。

しかしいくら若い衆とはいえ、明らかな篠田陣営に属する人間の言うことなど聞くとは思えなかった。ヤクザははっきりとした縦社会だ。自分の親の意志がすべてであり、下はその手足でしかない。

山内組傘下の組織構成員たちは、基本的に所属する組の長の意向に縛られている。個人の思惑は圏外だ。親が黒と言ったものに白とは言えない。篠田か横尾か、それを決めるのは組員たちではなく、その親分たちだ。

しかし上部組織の山内組の構成員だけはそうではない。もちろん下っ端の連中は自分たちの哥兄には逆らえないが、幹部連中は違う。

もともとこれは山内組先代を取るか、若頭を取るか、といういわば身内の争い事なのだ。

自分の組の親の意向に従う他の下部組織員とは違い、先代真島の直盃を受けた山内組組員だけは、どちらの旗を取るかは個人の胸三寸次第だ。表向きの顔と、腹の中が違っても、誰も気づかない――ましてやそれが、舎弟も兄貴も持たない一匹狼なら、 、 、 、 、 、 、 、 、 、 、 、――

真島の直盃を貰い、それでいてなんのしがらみもない男――

そんな男はひとりしかいない――

「内藤…啓介けいすけ――…」

一臣の口から漏れたその名前は、まるで悪鬼の召喚呪文、けっして口にしてはならない呪詛のように響いた。

内藤 啓介の側には、裕貴がいる――

内藤 啓介の絵図の終わり、 、 、はどこなのだろうか――

篠田にとっての邪魔者を消し、篠田派の前田を介して、篠田有利の手打ちを行うこと――?

手打ち――

「磯村…さん…――」

「なんや」

「通常、手打ちは、正式な手打ち式の前に、事前確認をしますよね…。今回も当然、横尾方こちら篠田方むこうで――」

「そらそうや。手打ちそのものをホンマにするんか…。少なくとも正式な立会人は決めなアカンしな」

正式な手打ち式の立会人は、利害関係のない大立者を立てるのが慣例だ。しかも今回の山内組のような広域巨大組織の跡目のような大きな揉め事の立会人ともなれば、当然、四国か九州、でなければ関東音羽おとわ会の沖賀おきがのような大物に出張って貰うことになる。

広域組織の大親分にご足労願うような、こうした正式な会を行うのに、途中で話が違うなどと揉め事は禁忌だ。事前に互いの意志を確認し合うのは当たり前のことと言えた。

「誰が…こちらは誰がその調整を?」

「そりゃあ…、沼田組ウチの親爺と渡会わたらいの叔父貴やろ。ふたりが横尾方こっちの最高幹部やからな」

「その会合はいつ…?」

「はぁ?」

「なにもなければいいんです。でも内藤が前田仲介の手打ちの話を持ち込んでから時間が経っています。その打ち合わせの日程は磯村さんに必ず知らされますか?」

一臣の勢いに押され気味になった磯村は首を横に振った。

「そ、そないな大事なことまで下に報告は来ぉへんわ」

「じゃあ、確認してくださいっ! 早くっ」

ヨカタの下っ端の腕貸しだというのに、それでも磯村は一臣を叱責もせずに、携帯を取り出してくれた。

電話が相手方に繋がるまでの時間がまるで永遠のように感じられる。

なにもなければいい――

一臣の杞憂ならばいい――

いっそ親分たちに一体、なにごとか、僭越だと怒鳴られる方が――

内藤が手打ちで満足してくれるなら――

裕貴――

おまえはこの絵図をどこまで見抜いた――?

内藤の正体におまえは気づいているか――?

裕貴――死ぬな――

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