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「New Moon」
大阪 Baby Blues

最終章『許されざる者』9

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「俺は最初から篠田さんの側で動いてたんやからな」

内藤は、さも心外だと言わんばかりに両手を拡げた。

そうか――と裕貴は思った。

内藤が向こうにいたから、最初に相原を狙ったのだ。

相原は夜目が利く。おまけに射撃の腕は一級品だ。

初めに潰しておかなければ、相原ひとりに篠田の男たちが何人獲られるか分からない。

それを知っているのは内藤だけだ。

少年たちを一番、間近に見ていた内藤だけ――

地面の上に、華奢な相原の体が転がっていた。

まだ――声変わりもあやしいような――子どものような体だった。

「篠田さん、こんな夜中に天保山までペラ回しに来たわけと違いますやろ」

内藤がそう言うと、篠田が不敵な笑みを浮かべ、男たちに軽く顎をあげて見せた。それを合図に男たちの手元が一斉に火を噴いた。

銃声と男たちの悲鳴と怒声――

無数の銃が吐き出すスモークが、広場の街灯の照り返しを受け辺りが煙る。

その中で内藤は、まるでスローモーション画像のように裕貴の方を向いた。石塔の陰に裕貴がいることを、最初から分かっていたかのように――

裕貴は石塔の後ろから立ち上がった。

内藤の手には拳銃が握られ、それはまっすぐにこちらを向いている。

俺は気づいていた――

一臣から、塚原が手打ちの要だったことを聞いた時。

横尾にとって、最後の起死回生の切り札を殺したのは、裕貴だと知ったあの時。

そしてそれを指示したのは――

――おまえ、なかなか根性あるな

――おまえのおかげや、裕貴

それは初めて会ったあの日から、決まっていたことだったのだろうか。

最初から描かれていた絵図に、俺はどう嵌まっていたんだろう――

どこかで道を違えることができたのか――

俺は――莫迦なガキだから――

「裕貴…、チャカ持ってるか?」

その言葉に裕貴はぎくりと身を震わせた。

内藤の声はまるで囁くようだったのに、この喧騒の中で裕貴には良く聞こえた。

アパートで最後に内藤が手入れをしてくれた拳銃を、もう一度握り直す。

誕生日ケーキなんて、そういや生まれて初めてだったな――

ふとそんなことを思い出した。

――おまえが生まれてきたことは、俺には嬉しいことや

――おまえが生まれてこぉへんかったら、おまえに会えへんかったから…

やっぱりこんな世の中クソだ――

生まれてなんてこなけりゃあ、こんな目に遭うこともなかったのによ…――

世界は変わらない――

二十歳はたちになったばかりの莫迦なガキが小狡い男に騙されて、そんな男に抱かれたくらいじゃ世界は変わったりなどしない――

たかがセックスだもんな…――

ふと見ると、広場の隅に亮の体が転がっていた。

俺が――呼びに行ったんだ――

内藤の言いつけに背いて、プレハブに寄らずにひとりで来ることも裕貴にはできた筈だった。

――当たり前やんけ。内藤さんが呼んでるんや…

行けば、亮たちが内藤を疑いもせずに裕貴とともに来ることなんて分かっていた。

――内藤さんってホンマ、すごい人なんやで

――俺、内藤さんのためやったらなんでもするわ

あいつは死ぬ前に内藤の姿を見ただろうか――

内藤の姿を見ないまま、信じたまま逝けただろうか。

――裕貴…、ええ名前やんか

――おまえならできる…信じてんで

俺は莫迦なガキだから…どこかで死ぬことなんてやっぱり現実とは思えなかったのかもな…――

――ふたりで死ぬか…?

その気もないくせに…――

手塚…――テッちゃんはどこにいるんだろう…小宮は――?

もう生きちゃいねぇか…――

俺が――殺したんだ…――

裕貴は小さく息を吐いた。

拳銃を握った右手をゆっくりとあげる。

裕貴は自分に照準を合わせている内藤を見つめた。

内藤はうっすらと笑みを浮かべていた。

――裕貴、好きやで…

――啓介って呼べ…

左手の拳を、体の横で強く握った。

引鉄にかけた指に力を入れる。

気づかぬうちに食いしばっていた奥歯が、ぎりっと嫌な音を立てた。

――撃て…裕貴

「…撃て…裕貴」

内藤の声が聞こえた――

「啓…――内藤…――っ!」

血を絞るような叫びと銃声が響いた。
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