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「New Moon」
大阪 Baby Blues

最終章『許されざる者』11

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**********

磯村を脅しつけて吐かせた大阪のモグリの医者の元で、裕貴が治療を受けている間に、大阪抗争は収束していった。

結局、こちら側の大将だった横尾の首は獲られ、長だけでなくそれを支えていた主要な組の頭たちを失った横尾方は空中分解し、山内組は篠田の跡目で手打ちとなった。

四国や九州の親分衆も、横尾本人を失ってしまってはもう手も足も出せない。これ以上、揉めて大阪の抗争が自分たちに飛び火することの方が困ると思ったのだろう。

一臣はもうどちらでも――というより最早、この権力争い自体がどうでも良かった。

一臣たちを大阪に送り込んだ秋津あきつ組の島村は、今さらながら兄貴風を吹かし、メンツがどうの、落とし前がどうのと携帯に連絡を入れてきていたが、それもすべて無視していた。

今の一臣は、裕貴のことだけで頭がいっぱいだったのだ。

銃弾を二発、腹に受けていた裕貴を見つけたときは、もう虫の息かと思っていたが、運のいいことに一発はそのまま体を通り抜けており、もう一発も主要器官をほぼ傷つけていなかった。

悪運の強いぼうずやな、とモグリの医者は呟いていた。

そんな様子だったから、一臣は裕貴がすぐにでもモグリの病院を抜け出すのではないかと気がきではなかったのだが、意外にも裕貴は、二週間ほどはおとなしくしていた。

だからその日、いつものように病院を訪れた一臣が空っぽのベッドを見つけても、それほど驚きはしなかった。むしろ二週間もよく保った、と思ったほどだ。

人づてに一臣がやっと内藤のアパートを探し当てた頃には、もう夕陽が沈み始めていた。

車が通ったら避ける隙間もないような狭い道路に面した古ぼけたアパートの端の、表札の出ていないドアのノブをそっと回した。

玄関に入ると狭い室内がひとめで見渡せた。

まともに西陽を受ける和室の畳の上に、見覚えのある華奢なシルエットが膝を抱えてぼんやりと座っていた。

「――裕貴」

シルエットがこちらを向いた――いや、向こうを向いたのかもしれない。いずれにせよ頭の向きが変わったことだけは分かった。

一臣は狭い三和土に靴を揃えて脱ぐと、そのまま和室の窓際まで行ってカーテンを引いた。

「――もう、体は大丈夫なのか?」

それには答えずに裕貴はぼそりと呟くように言った。

「――今日、何日?」

一臣が答えると、裕貴はふっと笑った。

「もう、そんなに経っちまったのか」

「全部、終わったから…」

全部、終わった――山内組の跡目争いも大阪抗争も終わりだ。裕貴と一臣の、盃を受けて初めての仕事は大黒星で終わった。

「…横浜に帰ったら島村の野郎にヤキ入れられるだろうなぁ」

裕貴は半分笑いながら舌打ちをした。

一臣も笑いながら肩を竦めた。

仕方がない――別にふたりの責任ではないが、腕貸しに行った先が大コケした挙句、総大将の首まで持って行かれてしまっては、ケジメを取られるのは諦めるしかない。理不尽であろうとなんだろうと、それがこの世界のルールだし、自分たちは分かっていてそこに飛び込んだのだから。

それに裕貴と知り合ったまっとうな高校生の頃ならいざ知らず、一臣もヤキを入れられることには慣れてしまった。女の懐をこく大事なドウグである顔と頭だけは守れるようにもなった。

一臣も胡座をかいて座り、ぼんやりと視線を畳の上に投げている裕貴の顔を見た。

少し痩せたけれど、顔色も良くなっている。これならもう横浜に戻れるかもしれない。ただもう少し傷が回復するまでは、秋津組には近寄らない方が良さそうだ。今、リンチになどあえば、一臣はともかく裕貴は死んでしまう。

でも、もう帰りたい、と一臣は心底、思っていた。

もううんざりだ。大阪にも、血の臭いにも――

「内藤は――?」

裕貴が唐突に言った。

内藤――啓介…――

内藤 啓介の行方は知れなかった。絵図どおりに篠田の跡目が決まったにも関わらず、内藤は姿を消してしまった。内藤の絵図のおかげで篠田は跡目を取ることはできたが、さすがにそれを公にすれば、その悪辣さ、仁義のなさ、子どもを大量に使い捨てにしたことで、篠田自身の漢を下げることになる、と判断したのだろう。

表向き、内藤は篠田に切られる形となった。今や、元横尾派も篠田派も内藤を追っている。もちろん篠田派の追っ手は体面を保つだけの形ばかりのものだろうし、どうせ裏では篠田から内藤に大金が流れたに決まっているのだが。

しかし、元横尾派の恨みは本物だ。大将格の横尾組だけでなく、幹部の渡会組、沼田組も親を獲られた因縁がある。彼らはけっして内藤の裏切りを許しはしないだろう。
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