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「New Moon」
大阪 Baby Blues

最終章『許されざる者』12

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裕貴から内藤 啓介の名前を出されて、一臣は動揺した。

もう――裕貴の耳に内藤の名を入れたくもなかった。裕貴の方からその名を出してくるとも予想していなかった。

裕貴にとっても内藤 啓介の名前なんぞ聞きたくもない筈だろうと思っていたから――

事が明るみに出て、裕貴を撃ったのは内藤 啓介だろう、と一臣は見当をつけていた。敵味方双方入り乱れての銃撃戦だったことはたしかだが、それでも裕貴を撃ったのは内藤だと、なぜだか一臣は確信していた。

あの場に行った時、裕貴がどこまで内藤の絵図に気づいていたのかは分からない。それでも一臣ですら気づいたことを見抜けないほど、裕貴はボンクラではない。

それでも裕貴はあの場に姿を現した。内藤の裏切りを知っていて、それでも裕貴はあの場所に向かったのだ。

血だらけで倒れていた裕貴の脇には拳銃が転がっていた。その弾はただの一発も減っていなかった。

だから――裕貴を撃ったのは内藤 啓介しかいない。

裕貴はあんな場所で、一発の弾丸も撃ち返しもせず、黙って撃たれるような男じゃない――

裕貴は、内藤 啓介が相手だったから、一度もその引鉄を引けずに撃たれたのだ。

一臣が押し黙ったままでいると、裕貴はその顔を見てふっと笑った。

「…まぁ、あいつも大阪ここにはもういられねぇか」

裕貴は莫迦じゃない。内藤 啓介の描いた絵図も承知で、その立場も理解しているのだ。

「あいつ…、なんだってあんな射撃はうまいけどカタギのあいちゃんなんか引っ張り込んだんだと思ったけど…、拳銃がヘタなんだな…」

裕貴は再び薄く笑いを漏らした。

あいちゃん――という少年を一臣は知らない。きっと内藤の連れていた少年たちのひとりで、裕貴とも親しくなったのだろう。あの時、裕貴を探して回った少年たちの死体の、一臣が顔を知らなかったどちらかが『あいちゃん』なのに違いない。

どちらの少年もまだ、子どものようだった――

「二発も撃ち込んだくせに殺すこともできねぇなんて…な」

「裕貴…」

思わず名を呼ぶと、裕貴がこちらを見たが、すぐに目を逸らした。

「…俺は…殺されるって分かってて、あいつらをあそこに連れて行ったんだ。あいつらを殺したのは俺だよ」

裕貴はもう笑ってはいなかった。長い睫毛に縁取られたふたつの瞳は一臣の方を向いていたが、それはどこか遠いところを見ているようだった。

「あいつが呼んでるって聞いたら、あいつらが行くに決まってるって俺は分かってた。あいつらはそう訓練されてたんだから」

そう――訓練されていた――内藤 啓介の操り人形だった少年たち――

「だから…裏切ったのはあいつじゃねぇ…――俺だ」

小さく、息が漏れた。

「おまえの情報は役に立ったぜ、一臣」

ふと焦点が一臣に帰ってきた。

「おまえのおかげであいつの絵図が分かった」

そして裕貴は下を向いて、自嘲気味に笑った。

「いくら色ボケしてても、あいつの悪だくみが見抜けねぇほどバカじゃねぇよ」

それからふと力が抜けたように、膝を抱えていた腕がほどけた。

「…でも…騙されてもいいか、と…思うくらいにはバカだったかな…」

「裕貴…っ」

一臣は腕を伸ばして裕貴の体を抱いた。

天保山へ仲間とともに向かった時、裕貴はなにを思ったのだろう――

信じていたのか、裕貴――

それとも、信じたかったのか、 、 、 、 、 、 、 、――

男にその身を許してまで、裕貴はたしかに内藤 啓介を愛していたのだろう。

寂しい子どもの心につけこんで、それを意のままに操る悪魔を――

それでも磯村は、内藤はすべての少年たちの体をもてあそんでいるわけではないと言っていた。

あいつは口先ひとつでガキどもを死地に追いやれる――

ならばどうして――と一臣は唇を噛んだ。

ならばどうして、裕貴のこともそうしてくれなかったんだ。

裕貴は頭の回転も早いし、悪事に長けた男だが、根は単純で、そういう意味では莫迦な子どもだった。

口先ひとつで子どもをいいようにできる男なら、裕貴にだってそうできた筈だ。

どうして裕貴にだけ、その愛情を利用するような真似をした。

どうして裕貴にだけ、その身を捧げさせるような真似をさせた。

どうして俺は、裕貴の傍を離れてしまったんだ。

どうして俺は――裕貴を守れなかった――

もう戻らない時を追いかける、たくさんの問いが一臣を苦しめる。

けっして――けっして離れないと誓ったのに――

裕貴をひとりにはしないと――

裕貴の変わらない明日になると、一臣は誓った。

それでもそれは足らなかった。

そんな誓いは裕貴を守ってはくれなかった。

裕貴が愛したのは俺じゃなかったから――
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