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Tattoo Maniac

第一章『悪魔の恋』2

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ソファに座っていた橘も、何事かというようにそちらに目をやった。

「…だからおまえらの親分を逮捕しパクりに来たんじゃねぇって言ってんだろうが」

野太いダミ声が響いてきて、ドアの向こうから慧も顔を知っている男が姿を現した。

「なんだよ、矢部やべのダンナじゃねぇか」

やって来たのは、伊勢佐木いせざき警察署暴力団対策課の矢部刑事だった。慧は以前、この刑事に参考人扱いで警察署に連れて行かれてしまったことがあった*3。矢部は暴力団対策課の主のような刑事で、橘とは昔馴染みだと、慧はその時知った。

その矢部刑事の後ろに、もうひとり連れの男がいる。やけに若いから矢部の部下だろうか。

「橘、てめぇ、舎弟の教育がなってねぇぞ」

矢部はがなるようにそう言いながら、橘の向かい側のソファに体を投げ出すように座った。

初めて会った時もまったく同じことを思ったが、矢部はまったく警察官には見えない。むしろヤクザです、と言われた方が納得してしまいそうな強面だ。

橘にそう言ったら、大笑いしていた。橘曰く、マル暴*4なんてのは皆、ヤクザ以上にヤクザらしいのが普通なのだそうだ。そうでないと暴力団対策課なんてものは勤まらないのか、ヤクザとつきあううちにそうなってしまうのかは、慧には分からない。

ヤクザの組事務所へのマル暴の突然の登場に、橘組の組員たちは皆、気色ばんでいた。事務所内の空気がにわかに殺気立ったものに変わった。しかし、矢部も、組長である橘も涼しい顔をしている。若頭の笈川も平静だ。

「なんだよ、ご機嫌伺いか?」

橘は、いつものように唇の片端だけを器用にあげた皮肉な笑みを浮かべた。

「ばかやろう。ゴロツキのご機嫌伺うほどこっちはヒマじゃねぇ」

矢部はそう言うと、よれよれのスーツの内ポケットから写真を一枚取り出し、それをガラスのソファテーブルの上に投げた。

「――おまえ、この男、知らんか?」

橘はソファの背凭れに預けていた体を面倒そうに持ち上げ、写真をちらりと見た。ソファの後ろに立っていた慧も、それをこっそりと覗き込む。

写真には、怒りの形相でこちらを睨みつけている銅像の刺青が入った男の裸の背中が写っていた。

「――知らねぇな」

橘は興味なさげに、ふんと鼻を鳴らした。

「その態度はなんだっ! ちゃんと見ろっ」

怒鳴ったのは矢部に伴って来た男の方だった。ぱりっとしたスーツに身を包み、見れば矢部よりも随分と若い。慧と同じ歳くらいか、もしかしたら歳下かもしれない。

最初は矢部の隣におとなしく腰をおろしていたその若い男は、橘の気のない態度に腹を立てて写真を掴むと、鼻先で振り回した。

橘はうんざりした表情で顔を背ける。

「おっさん、こんなトコに素人ネスのガキなんて連れてくるんじゃねぇよ」

「なんだと…っ」

青年は、怒りで顔を真っ紅にして立ち上がった。周囲の若い衆の表情が途端に険しいものになる。

「――やめとけ、和泉いずみさん」

矢部も少々、困った様子で、いきり立つ青年のスーツの裾を引っ張って、無理矢理、座らせた。

「こっちは一課の和泉警部補だ」

矢部は隣の青年を指して言った。

「警部補?」

橘は片眉をあげて、その青年を見た。さも面白い冗談だ、と言わんばかりの表情だ。

「なんだよ、このニイちゃん、あんたの高目*5か?」

ということは、矢部の階級は警部補以下なんだな、と慧は推察した。矢部は、もう五十歳は超えていそうだ。刑事ドラマなんかで良く見る、いわゆる現場の叩き上げなのだろう。

矢部は橘の揶揄を受け流すと、和泉警部補の手から取り上げた写真を再びテーブルの上に置いた。

「よく見ろ、橘。この写真のホトケさんな、首がねぇんだ」

「えっ!?」

言われた橘よりも、後ろで覗き込んでいた慧が驚いて声をあげてしまった。



*3…同ブログ内『BROTHER』参照。
*4…暴力団対策を担当する警察内組織や刑事。
*5…目上。
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