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Tattoo Maniac

第一章『悪魔の恋』3

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矢部の言うとおりだった。遠目で良く見えなかったが、写真はよく見ると、まるで加工写真のように頸から上が無かった。丁度、断面に当たる部分がふやふやと僅かに波打って見える。

その場の視線が、思わず声をあげてしまった自分に集まったのに気づいて、慧は慌てて口を閉じた。

和泉警部補が驚いたような顔でこちらを見ている。それはそうだろう。

矢部は一度、慧に会っているし、慧が堅気だということも知っている。けれど和泉警部補は慧とは初対面だ。ヤクザの組事務所にヤクザ以外の人間がいるなどと想像している筈がない。それなのに、死体の写真を見て、ついヤクザらしからぬ声をあげた慧の存在を訝しく思っているのに違いない。

小声ですみません、と言って慧はできるだけ体を小さくした。とはいえ、一八十センチメートル近い体がそうそう小さくなる筈もないが。

「そうみてぇだな」

橘は見りゃ分かる、と言わんばかりの声を出した。橘は、その写真の胴体に首がついていないことに気づいていたのだ。気づいていて、顔色ひとつ変えずにいたことに慧は驚いたが、考えて見れば橘は十代からの年季の入ったヤクザ者で、死体など見慣れている。今さら、写真になんか驚く筈もない。

「――だから一課が来たんだろ?」

橘は軽くあげた顎の先で、矢部の隣に座った和泉を指した。暴力団担当の矢部が、殺人、傷害、暴行などの強行事犯と呼ばれる事件を扱う刑事第一課の和泉を伴って現れた理由が、慧にも分かった。

「そんだけ若くて警部補ってことはキャリアか。インテリぼっちゃんのケツ持ちじゃあ、ダンナも大変だな」

橘はそう言うと、にやにやと笑った。

「なんだと?」

和泉がますます顔を紅くした。歯ぎしりの音まで聞こえてきそうだ。

それを見て橘は、今度は声をあげて笑った。

「やめとけよ。ヤクザの事務所でイキったってしょうがねぇだろ?」

「貴様…っ」

再び腰を浮かした和泉を、やめとけ、と矢部が再び制した。

橘はテーブルの上に放り出してあった煙草を取り上げ、それを咥えてから火を点けた。

「こんな立派な刺青もんもん入りじゃあ、この死体オロク、前*6があったんじゃねぇのか?」

それに応えて、矢部が頷いた。

「…中島 誠、逗子ずしの柳沢組の構成員だ」

「――あっ」

死体の身元を聞いて、慧は再び声をあげてしまった。その瞬間、後ろから若頭の笈川の蹴りが入る。

「あ〜、あ…、あの…、僕、お茶を煎れてきますね」

慧は誤魔化すようにへらっと笑って、その場を離れた。

「あのカタギのぼうやはまだいるんだな」

部屋の隅でコーヒーの支度を始めた慧は、背中で矢部の声を聞いた。

得物の具合、 、 、 、 、がいいからな」

橘がしらっとそう言い放ったのが聞こえて、慧はコーヒーカップを落としそうになった。

あいつはなんちゅうこと言うとんねん!

そして誰かが咳き込む音がした。

「なんだぁ? 一課の割にゃ、純情ウブすぎんじゃねぇのか?」

橘のあけすけな物言いに咳き込んだのは、和泉警部補のようだった。矢部は明後日の方を見て、知らん顔をしている。

「おっさんに注意事項を聞いてねぇのか? 俺は男も女も見境のねぇ取扱注意の危険人物だぜ?」

自分で言っていれば世話はない。聞き耳を立てていた慧は飽きれ気味に息を吐いた。

橘がにやにやしながら和泉の顔を覗き込んでいる。和泉は真っ紅な顔で下を向いてしまった。

「安心しろや、オデコ*7に手ぇ出すほど不自由しちゃいねぇ」

橘が相手の性別を問わず食指を伸ばすことは、警察関係者内でも有名な話だ。橘組に事情聴取に来るのならば、当然、事前にその情報は和泉警部補にも知らされていた筈である。

橘は紅くなっている和泉をにやにやと横目で見ながら、話を戻した。

「身元が分かってる男のことをわざわざ俺に訊きに来たのか?」

「逗子のヤクザがなんだって横浜で殺されてんのか、不思議じゃねぇかよ」

矢部が鋭い声を出した。

「俺が知るかよ」

橘が肩を竦める。

「逗子の柳沢組は橘組おまえらの同門だろうが。こっちに挨拶に来るってこともあんだろ?」

矢部は食い下がったが、橘はもう興味を失くしたように外方を向いていた。




*6…前科、前歴。
*7…警察官。
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