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Tattoo Maniac

第一章『悪魔の恋』4

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「あの…」

人数分のコーヒーを煎れて、慧はおそるおそる矢部と和泉の前にカップを置いた。ヤクザの事務所を訪れた警察関係者に、コーヒーなんて出していいものかどうか分からないが、行きがかり上、仕方がない。橘は慧をちらりと見たがなにも言わなかった。

矢部は小さい声で、すまねぇな、と言ったが、和泉は生真面目にありがとうございます、とはきはきと礼を言った。慧がヤクザ者ではないと分かったからなのだろうか。それにしても、そんな大きな声を出さなくていい。

「あ、はい」

びっくりしてしまった。和泉はまだ顔を紅くしたままだ。橘のつまらない冗談のせいだ。

矢部は砂糖もミルクも入れて、スプーンでコーヒーを掻き回してから一口飲んだ。

「…まさかおまえの事務所でコーヒーをごちそうになるとはな」

矢部の口調は半ば、飽きれぎみだ。やっぱりコーヒーなんて出さない方が良かった。でも、あの場は仕方がなかったのだ。

「なんでですか? 美味しいですっ」

ブラックのままコーヒーを啜っていた和泉が、またはきはきとした声でそう言った。真面目な顔でコーヒーを煎れた慧を見ている。

「あ、はい。ありがとうございます」

つられて慧も生真面目に挨拶をしてしまった。

このとんちんかんなやりとりに、矢部は口をぽかんと口を開けて歳下の上司を見ており、橘は笑いが堪えきれず、横を向いて肩を揺らしている。

やっぱりコーヒーなんて煎れんかったら良かった、と慧は下を向いた。

「――オヤジさん、こいつ、どこで見つかったんだ?」


興味のない態度を取っていた橘が、不意に尋ねた。

矢部は橘の思惑を推し量ろうとするようにしばらくその顔を見つめてから、横浜駅近くのホテルの名前を告げた。

「死んだ時間も分かってんだろ?」

「死亡推定時刻は昨夜の午後十時から午前三時の間だな」

矢部がすんなりと橘に情報を出したことに、和泉は驚いたような表情を見せたが、声を荒げて咎めたりはしなかった。

矢部の返答に、橘は少し意外そうな顔をした。

「随分、幅があるな。今はもう少し、細かく分かるんじゃねぇのか?」

「胃の内容物の消化具合は分かっても、ホトケさんが殺される前の足取りが分かんねぇんだよ。最後に食事をした時間が分かれば、もう少し絞り込めるんだがな」

そう言って矢部は、おまえが知ってるんじゃないのかと言わんばかりに、橘の顔を覗きこんだ。しかし橘の方は一切、その感情を表には出していなかった。

「首は見つかったのか?」

「まだだ」

橘は矢部の返答を聞いて、ふんと鼻を鳴らした。

ふたりの刑事はコーヒーを飲み終えてから、席を立った。

立ち上がると、和泉は思っていたよりずっと長身だった。一八十センチメートルを超える笈川と同じくらいか、もしかしたらもっと大きいかもしれない。体は細身だったが、肩周りは警察官らしく鍛えたような厚みがある。

「なにか思い出したら連絡しろよ」

矢部はそう言って、ずり落ちそうなよれよれのズボンを引っ張り上げた。

「矢部さん、連絡先は…」

和泉が訝しげに訊くと、再び橘が吹き出して、矢部はうんざりした表情を見せた。

「おっさん…っ、警部補殿の教育、しっかりしとけよ…っ」

なにがおかしいのだかさっぱり分からないのだろう、和泉はきょとんとした顔を見せている。しかし慧にも、なぜ橘がそんなに笑っているのか分からなかった。笈川も横を向いて、笑いを噛み殺しているようだ。

ひとしきり笑ってから橘が言った。

「警部補殿、矢部のおっさんと俺は昔馴染みなんだぜ? お互いの連絡先くらい知ってるよ」

それを聞いて、和泉は口を大きく開けて驚きを露わにした。

「そ…っ、そんなこと…っ、警察官とヤクザがお互いの連絡先を知ってるなんて…っ。えっ!? ダメでしょ、それは…っ。いいんですかっ、矢部さんっ」

矢部はもう片手を額に当てて、ぐったりしてしまった。

「和泉さん、俺たち二課はしょうがないんですよ…」

年齢は下だが階級が上の和泉に、矢部は丁寧に言った。

「あんたも名刺、渡しときます?」

「いえ…」

しかし和泉は気が変わったのか、ポケットから皮の名刺入れを取り出し、

「和泉 翔太と申します。なにか困ったことがありましたら、すぐに連絡してくださいっ」

と、なぜか慧に向かって名刺を差し出した。
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