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Tattoo Maniac

第二章『死体置場でロマンスを』6

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*********

笈川たちは結局、もうひと部屋、余分に借り受けることになった。

鍵を受け取った時は、どうせ帰るつもりだったし、たとえ泊まることになってもふたり一組でふた部屋あれば充分だと思っていたから、鍵はふたつしか受け取らなかった。しかしそのひとつには、もう橘があの白川 武尊とかいう柳沢組の若い衆を咥え込んでいるに決まっている。しかし残るひとつに三人で寝ても構わないと、部屋に行ってみたら布団が二組しかなかった。旅館の仲居を呼んで布団を運ばせようとしたが、仲居はもうひと部屋使ってくださいと言って、布団の代わりに鍵を持って来たのだ。

柳沢の親分は全室分、気前よく前払いしたらしい。だから空いている部屋ならば、旅館側はいくつ使っても、足が出るということはないのだろう。

笈川は新しく取った部屋は慧に充てがって、自分と葛西を同室に残した。

慧がおやすみなさい、と部屋を出て行くと、笈川は和室に置かれた座椅子に腰をおろして煙草に火を点けた。四六時中煙をあげている橘といる時は、見ているだけで嫌になるので滅多に吸わないが、笈川も時々煙草を吸う。

目の前の座卓には、仲居が煎れた緑茶が置いてあった。

煙草の煙を吐き出すついでに溜息も零すと、葛西が笑った。

「笈川さんも苦労性ですねぇ」

「別にいまさら裕貴あいつの始末の悪さなんか気にしてないぞ」

橘は、下半身はいい加減だが、莫迦ではない。同門とはいえ他の組の下目の舎弟を、この後も囲い込もうとは考えてはいないだろう。ちょっと出先で会った男がたまたま喰えそうだから喰った、くらいのことだ。この程度の火遊びならば、問題はない。

「――しかし橘さんはホントに手が早ぇなぁ。てめぇが寝た男の葬式ギリで別の男を咥え込みますかねぇ」

座卓の狭い方の辺に置かれたもうひとつの座椅子に胡座をかきながら、葛西が苦笑した。

「あれは病気だ」

笈川の言葉に葛西が爆笑した。

「しかし、慧もすっかり橘さんの悪さに慣れましたねぇ」

ちょっと前まで、浮気されるたびに死にそうなツラしてやがったからな、と葛西は顎を撫でた。

それは笈川も感じていた。そしてほっとしている。

笈川はもうずっと、慧が、橘の悪癖に慣れることを願っていた。橘が誰彼構わずベッドを共にするのを止める手立てはない。そのたびに心臓を撃ち抜かれたような顔で、嫉妬に苦しんでいる姿を見るのは、こちらの方がやるせなくなる。

特に慧はああいう男だから、橘を責めることもなく、じっと黙って耐えている。いっそ罵ったりなじったりしてくれるならば、こちらもうるさい知ったことか、と居直れるのだが、そのつらさをひとりで飲み込んでいられるのは、見ていて気分のいいものではなかった。

「――で? 俺になんか話でもあるんですか?」

笈川が熱い緑茶を飲んで一息入れたところで、葛西が言った。

「若頭のあんたがひとり部屋を取らずに、わざわざ俺と同室になったんだから、なんか話があるんじゃないですか?」

さすがに葛西は勘がいい。

笈川は座卓の中央に置かれた灰皿に煙草を揉み消した。

「おまえ…、十年前、俺たちが大阪から戻ったばかりの頃、一時期、裕貴ゆうきつるんでた、 、 、 、 、ことがあったろう」

そう言うと、葛西の顔から一瞬、いつもの薄ら笑いが消えた。しかしすぐに苦笑しながら頭を掻いた。

「…まいったな…。あんたの目はごまかせないですね、おっかねぇ」

「別に俺は裕貴を見張ってるわけじゃない。だが、あいつはそういうこと、 、 、 、 、 、を隠せるタイプじゃない」

隠す気もないしな、と付け加える。

「で? 今さら、十年前の俺の悪さ、 、を引っ張り出して、説教するつもりですか? この世界、十年経ったら水に流すもんだと思ってましたけど」

葛西がにやにやとこちらを見た。

「おまえと裕貴の十年前の悪さ、 、をほじくり返して突つくほどこっちも暇じゃない。おまえは裕貴の盃を受けた後は、舎弟としての一線を踏み越えちゃいないだろうしな」

十年前――まだ売り出したばかりのチンピラヤクザだった橘と笈川は、当時、形ばかりの盃を受けた哥兄の名代で、大阪の跡目争いの腕貸しに赴いた。それは結局のところ、負け戦のババを引かされたような仕事だったが、それでもふたりは生き残って横浜に帰ってくることだけはできた。なかにはあの抗争で腕貸しに行ったまま、命を落とした者もいたのだ。

大阪から帰った後、橘はほとんど手当たり次第といっていいほど、男とも女とも寝ていた。ヤクザには絶対的禁忌である筈の哥兄の女にまで手を出すほど、その行状は荒れていた。

その頃に今でも情人である兄貴分の新城 あきらとの関係もできたし、当時、新城とは五分兄弟で、橘と笈川にとっては哥兄の立場であった葛西 哲也ともほんの一時期のことだが、関係があったことを笈川は知っていた。
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