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Tattoo Maniac

第二章『死体置場でロマンスを』10

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治りかけた傷口を掻きむしってしまえば、疼きは消える。でもそれは傷を増やすだけで癒すことにはならないから――裕貴は自分で自分を痛めつけて、内藤に抉られた傷の痛みを忘れようとしているのじゃないか――淳子は葛西にそう言った。

自分で自分を痛めつけて―― 過去の傷すら思い出せなくなるほどのもっと強い痛み――

他の男たちに抱かれることは、橘に痛みばかりをもたらしたわけではないだろうと思う。それは、橘にとっては一種の記憶の改竄でもあった。内藤に抱かれた快楽を、男に、 、抱かれる快楽に上書きする。

笈川はずっとそう思っていた。

橘は男に抱かれながら、自分に言い聞かせているのだ。

あれは恋じゃなかった。あれは愛じゃなかった。

自分はただ肉の悦びに流されただけだと――

今となってはもうそこまでの衝動はないだろう、と笈川は推測していた。橘が男を相手にするようになったのは内藤が始まりだろうが、浮気癖はもう習い性のようなものだ。

「それで俺は余計に悩んじまった。そんなガキの必死にこっちがつけこんで、もてあそんじまっていいのかねぇって…」

その言葉に笈川が葛西の方をちらりと見ると、そんなに睨まないでください、おっかねぇと葛西はおどけた。

「それでも誘われれば、ほいほいついて行っちまった俺に言い訳はきかねぇけど、淳子はもうひとつ、ちょっと気になることは言ってましたよ」

「気になること?」

葛西は一度、頷いた。

「ええ。裕貴を見ていると時々、ぞっとする、人の気持ちも愛情も信用しないで、むしろ利用しているあいつを見ていると、まるで内藤を見ているかのようだって…」

まるで――内藤のよう――?

「似ちゃあいないだろう。内藤は絵図描きだ。裕貴はそんな策士じゃない」

笈川は疑問を口にした。

ヤクザとしては、内藤と橘は大きく違う。

内藤 啓介は稀代の絵図描きだ。

あの男の目的は金でも地位でも女でもなかった。あいつはただ――自分の頭の中に描いた大絵図に合わせてゴロツキ共をたぶらかし、共喰いをさせて権力構造を描き変える――それだけが楽しい男だった。

人を操り、運命を惑わす男――

しかし橘はそうではない。

橘は内藤のように裏で暗躍するようなタイプではない。表に立ち、組を構え、盃を与えた舎弟を背負って生きている。

葛西はそれに反対はしなかった。

「そりゃあヤクザとしてはねぇ。内藤は、表舞台には絶対に出てこない男でしたからね。あいつは絵図描きだ。裏でいくらシノいだんだか知らねぇが…あいつが絵図を描くとなりゃあ、目をつけられた組織はたいてい沈んじまう」

大阪だけじゃねぇ、と葛西は眉根を寄せた。

「だけど橘さんはねぇ」と、葛西は苦笑した。

「ありゃあ表舞台の男だ。やることは派手、仕込みはあざとい、花火をあげるのが大好きな人ですからねぇ」

そこまで言って葛西は煙草を消した。

「でも淳子の言ってるのはそういうことじゃないでしょう。あいつは女だ。ヤクザとして内藤と橘さんを比べてるんじゃないんですよ。あいつは、ただの男として、 、 、 、 、 、 、、あのふたりを見て、似てると思ったんだ」

内藤 啓介は誰にも盃をやらない男だった。関西の最大勢力である阪神山内組の、当時の六代目組長 真島の盃を受け、カンバンを背負っていても、組織には属さない男だった。自分で籠絡した少年たちを駒のように操り、いざとなれば、身も心も捧げた情人たちも使い捨てる一匹狼。誰も信用せず、誰の想いも振り返らない。

人の心をもてあそぶ悪魔――

笈川の脳裏に、唐突に慧の姿が過ぎった。

慧は橘 裕貴が目をつけ、籠絡し、堅気の道を踏み外してこの世界に堕ちた。

出会った当初、妹、結佳ゆかが辱められ、その身を売らせるような女の苦界に叩き落とされたことを知った慧は、橘を憎んでいた。顔を合わせるたびに嫌悪を露わにしていた。変化が現れたのは、橘組の仕事を慧に手伝わせてからだ。

あの時、橘組の縄張りシマで見知らぬ男が違法薬物売買をしていた。これも内藤の絵図の一部だったのだが、あきらかなこの縄張りショバ荒らしの尻尾を掴むのに、顔の割れていない素人ネスが必要で、笈川たちはちょうど見知ったばかりの慧を使った。

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