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Tattoo Maniac

第三章『真夏の夜の夢』4

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たまたま庭園の中で会ったのだと慧が説明しようとした時、玄関の方から言い争う声が聞こえて来た。その喧騒がそのまま慧たちのいる座敷に近づいてきた。

「ちょっと…っ」

亮祐の声がそう言った、と思う間もなく、座敷に面した縁側の廊下に、矢部刑事が姿を現した。その後ろに、和泉警部補まで現れた。それを亮祐が、慌てて追いかけてきた。

「失礼ですが、どちらさまでしょう?」

柊弥は、突然の闖入者のふたりに、厳しい表情を見せつつ、凛とした態度で尋ねた。

その声の主を見て、矢部が一瞬、ぎょっとした顔をした。まさかこんな綺麗な男が、着物姿で座っているとは思っていなかったに違いない。

「――失礼しました。横浜の伊勢佐木いせざき署の者ですがね。こちら彫豊さんで?」

さすがにベテランの刑事らしく、矢部はすぐに気を取り直して身分証を示し、名前を名乗った。和泉もそれに倣うが、こちらはまだぽかんと柊弥の顔を見つめていた。

「私が彫豊ですが、いきなり上がりこむなんて失礼ではありませんか」

柊弥は、美しい顔を顰めた。 

「いや、申し訳ない。ちょっと顔見知りがここに来てるんじゃないかと思いましてね」

矢部はそう言うと、座敷に座った橘をちらりと見て、ふんと鼻を鳴らした。

「なにやってんだ、こんなとこで」

「よぉ、おっさん、オデコが図々しいのは今に始まったことじゃねぇが、令状は持ってんだろうな?」

橘は、にやにやと矢部と和泉を見上げた。

「ばか。任意だ、任意」

玄関先で応対に出た亮祐はふたりと言い争っていたし、家に上がりこむのを止めていた。全然、任意じゃない。

橘も鼻に皺を寄せて、横を向いてげーっと舌を出している。

「殺人事件の捜査なんですよ、彫豊さん。ちょっとお話をお聞かせ願えませんかね?」

柊弥は溜息を吐いてから、どうぞと席を勧めるように掌を上にして手を差し出した。

「他の方には席を外していただきましょうか?」

座卓の前に腰を下ろしてから、矢部はいやいやと手を振った。

「なに、こいつらは顔見知りです。おまえらにもついでに話を聞かせてもらうからな」

矢部がぎろりと橘を睨んだ。

「後つけて来たのかよ?」

橘がうんざりした表情で言うと、意外にも矢部は少し怯んだように見えた。

「おまえらが、横浜に戻りそうにないみたいだったからな…」

と、なにやら急に歯切れが悪くなる。

「朝、自分が車に乗り込む慧さんを見かけたんです。どこにいらっしゃるのかな、と思って…」

和泉が、少しはにかんだように下を向いて言った。

俺の後をつけてたってこと?

慧は驚いて、下を向いたまま頰を染めている和泉を見た。

いやいやいや、それは怖すぎるやろ。

和泉の表情は、刑事が容疑者や参考人の後をつけていたという風情ではない。これではただの職権乱用のストーカーだ。

事情を知らない柊弥は、なんだか混乱したような顔で和泉を見ていたが、それでも亮祐にお茶を持ってくるように言いつけた。

「いや、すみませんね。おかまいなく」

暴力団関係者である慧への好意を隠そうともしない和泉の態度に、半ば諦めたような表情を見せていた矢部が、気を取り直したように言った。

「実はですね、この辺りを本拠地としている暴力団構成員の男の死体が、横浜市内のホテルで発見されましてね。中島 誠というんですが、ご存知ないですかね?」

「私どものところで刺青を刺れられた方ですね」

どうせ調べられれば分かってしまうことだから、柊弥もごまかす気はないようだ。

しかし、どうやら矢部も和泉もその事実を知っていて乗り込んできたわけではないようで、ふたりの顔には驚きが拡がった。

「本当ですかっ!?」

勢い込んで尋ねる和泉を、柊弥は押しとどめるように答えた。

「ええ。ただ、中島さんが私どものところにいらしてたのは最近のことではないんです。もう十年以上前のことなんですよ」

矢部は見るからに落胆した。十年以上前に出入りしただけの刺青工房では、最近の被害者の手掛かりは見込めないと考えたのだろう。

矢部は柊弥に向けて、ふむ、と納得したような声を出した後で、橘の方へと向き直った。その瞬間にもう目つきが違う。ヤクザ相手には容赦はしない、という表情だ。

「おまえらは、それを知ってやがってここに来たな?」

橘は、外方そっぽを向いたまま笑った。

「勘ぐりも過ぎると嫌われるぜ、おっさん。俺と柊弥コイツは昔、いい仲、 、 、だったんだ。中島さんの葬式ギリで近くまで来たから、昔の情人イロに挨拶に寄っただけだよ」

しかし、矢部はそんな橘の戯言はまともに捉えていないようで、それをあえて無視して言った。

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