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Tattoo Maniac

第三章『真夏の夜の夢』13

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「あの人に睨まれて…俺は自分から足を開いた…。なにをされるか分かってて、俺は…自分から…――」

「もういい――っ」

考える前に体が動いた。

笈川は腕を伸ばして、橘の体を抱き寄せていた。

橘が内藤 啓介に出会った大阪の跡目争いは、最初から最後まで内藤の絵図の内だった。その大絵図の最後は、橘に仲間の少年たちを集めさせ、敵方の大物ヤクザもろとも片づけることで幕を閉じた。

橘に銃弾を撃ち込んだのは、内藤 啓介だった。

橘は内藤 啓介の裏切りの絵図を見抜いていた。見抜いていて、最後の場所に向かったのだ。仲間を連れて――

ほんの数日でしかなかっただろうが、内藤に殺された少年たちは、橘にとって仲間だった筈だ。その絵図の裏を見抜いていながら、その仲間たちを死地へといざなってしまったこと、そしてなにより内藤に裏切られたことは、橘に深い傷を負わせたことは間違いない。

絵図が見抜けないほど莫迦じゃない――でも騙されてもいいと思うくらいは莫迦だった――

すべてが終わった後、橘は笈川にそう言った。

それは、笈川には、騙されたまま死にたかったという橘の心の叫びに聞こえた。

裕貴――それはただの恐怖じゃない――

橘が怖れたのは、内藤の力でも暴力でもなかった筈だ。橘は、力や暴力に怖れを抱くような男じゃない。

――捨てられるのが怖かった

橘が怖れたのは――内藤 啓介を失うことだ。

その手の温もり、肌の温かさを失いたくなかったのだろう。

自分のすべてを捨てても失いたくないという想い、それは愛だ。

けれど笈川には、それがどうしても言えなかった。

橘に、おまえは内藤 啓介を愛していたのだ、と突きつけることは躊躇われた。橘にとってこの十年間はまさにその事実との戦いだったのだから――

橘が、身も心も捧げて内藤を愛したことによって仲間は殺され、自分はその命まで使い捨てにされた。橘はその現実を、その身の奥深くに封印して生きてきたのだ。

「裕貴…――」

その体を抱く腕に力を込めると、橘は逆らわずに笈川の肩口に顔を埋めた。そのままじっとしていた橘が、ふいにくすりと笑った。

「…おまえはさ、いつも誰かの心配ばっかしてんのな」

そう言って橘は顔をあげた。

「俺の心配…、慧の心配…。まぁほとんど俺か…」

橘は小さく笑いを漏らしてから、身を捩って楽な姿勢になると、再び笈川に寄りかかった。

「ガキの頃から俺のケツの始末ばっかでよ…。自分が欲しいもの、やりたいこと…、なーんも言わねぇんだもんな…」

「俺のやりたいことは、おまえにこの世界で頂点を取らせることだ」

体にその重みを感じながら、おまえも知ってるだろう、と笈川は言った。

腕の中で橘が笑う。

「…そりゃあ、せいぜい頑張るけどよ」

不意に橘が笈川に振り向いて言った。

「じゃあ…おまえの欲しいものは?」

至近距離で、橘はじっと笈川を見つめている。

「おまえの欲しいものって、なんだよ?」

橘の視線を受け止めたまま、笈川はなにも言えなくなった。

欲しいもの――俺の欲しいもの…――

「…欲しいものなんか…ない」

ふいと顔を背けて、そう言った。

再び、橘が鼻で笑う音がした。

「欲のねぇヤクザかよ。面白くねぇ冗談だな」

そう言うと、橘は椅子の上にあがり、笈川の膝の上に跨った。

「――俺は?」

膝に乗ったまま、橘は笈川を見下ろしてそう言った。

「俺のこと――欲しくねぇの?」

橘は、笈川の頸に腕を絡めて薄く微笑んだ。

「おまえはものじゃないだろう」

顔を背けたまま、笈川は言った。

ふふっと小さな笑い声がして、笈川の耳に橘の唇が落ちてきた。

「俺が抱けって言えば、いつでも抱くくせに、おまえが俺を抱きたいって言ったこと、一度もないよな」

橘の唇が首筋を滑る。

「裕貴…、ふざけるな。降りろ」

のしかかる体を押し返しても、橘は一向に悪ふざけをやめようとはしなかった。

「一臣…、言えよ…。俺のこと欲しいって…」

耳許で橘が囁く。
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